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【識者解説】23年度予算は114兆円超に…巨額「予備費」乱用に懸念

【識者解説】23年度予算は114兆円超に…巨額「予備費」乱用に懸念

2023年度予算が賛成多数で可決、成立した参院本会議

2023年度予算が28日の参院本会議で可決、成立した。一般会計の総額が22年度当初予算比6・3%増の114兆3812億円と、11年連続で過去最大を更新。100兆円を超えるのは5年連続で、110兆円を初めて突破した。防衛力の抜本的な強化や子ども・子育て政策の強化、グリーン・トランスフォーメーション(GX)対策などに充てる経費を計上した。

鈴木俊一財務相は23年度予算について「歴史転換期にあって、日本が直面する内外の重要課題に道筋を付け、未来を切り開くための予算」と述べた。

防衛費は過去最大となる6兆8219億円を計上した。22年12月に策定した新しい「国家安全保障戦略」などに基づき、スタンド・オフ防衛能力や総合防空ミサイル防衛能力、施設整備などの重点分野を強化した。防衛費を5年間で43兆円程度確保する方針だ。

社会保障費も36兆8889億円と過去最大を更新した。子ども・子育て支援の強化にも乗り出す。4月にこども家庭庁を創設する。GX対策では、民間の投資を後押しするため「GX経済移行債」を発行するほか、革新的な技術開発やクリーンエネルギー自動車の導入支援などのための費用を盛り込んだ。

一方で、巨額の予備費の常態化が懸念されている。23年度予算では、一般予備費の5000億円のほかに、新型コロナウイルス感染症および原油価格・物価高騰対策予備費に4兆円、ウクライナ情勢経済緊急対応予備費に1兆円を計上した。

22年度は、当初予算でコロナ・物価予備費として5兆円を計上した後、補正予算を編成。その結果、コロナ・物価予備費の予算が9兆8600億円に膨らんでいる。

コロナ対策で巨額の予備費が常態化し、コロナが収束する中で、物価高対策などに使途が広がっている。

国会審議を経ずに政府の裁量で使途を決められる予備費の肥大化で、財政規律の緩みが危惧される。財政民主主義の観点から予備費のあり方が問われている。

日刊工業新聞 2023年03月29日
志田義寧
志田義寧 Shida Yoshiyasu 北陸大学 教授
記事にもあるように、予備費の乱用は問題が大きい。同じ日に閣議決定された総額2.2兆円の物価高対策も予備費が充てられた。記事中の「財政民主主義」とは国家が課税したり、支出したりする財政活動は、選挙で選ばれた議員で構成される国会が決めるという考え方である。憲法83条は「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、これを行使しなければならない」と定めている。国民主権の原則を踏まえれば、財政活動に国民の意思が反映されている国会の議決が必要というのは当然と言える。一方、憲法第87条は「予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる」とも定めている。ポイントは「予見し難い」事態の内容であり、素直に読めば、災害など不測の事態を想定するのが自然だ。政府は2007年、災害などに起因する緊急経費や比較的軽微な経費などを除き、国会開会中は予備費は使用しないと閣議決定したが、もはや形骸化している。支出はまずは通常の予算や補正予算で対応するのが筋であり、予備費を政府・与党の使い勝手の良い財布にしてはならない。

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