活字離れにコロナの追い打ち、高品質「書籍フィルム」販売会社“板挟み”倒産の顛末
フィルムルックスは、1973年(昭48)12月に設立された書籍用フィルム製品等販売業者。独NESHEN製の、本の汚れや破損を防ぐプラスチックフィルム「フィルムルックス」の販売および装着請負を手がけていた。アクリル性接着剤を粘着シートに使用することで、同業者製品に比べ経年劣化が少ないのが特徴で、これにより書籍の耐用年数が伸びることから、差別化が図られていた。大阪府や福岡県にも営業所を構え、図書館向けの案件を多く受注していたほか、一般消費者向けの本の補修テープやカバーフィルムも扱い、大口のスポット受注が寄与した2004年11月期には年売上高約11億8700万円を計上していた。
しかし、以降は世の中の活字離れなどを背景として、地方自治体の図書館関連の予算規模が縮小していったことから市場自体が停滞。また、高品質ではあったものの、やや高価な海外製品を主体としていたことから、安価な国産品との競合も厳しく、売上・利益ともに漸減傾向が続いていた。こういった状況のなか、新型コロナウイルス感染拡大が追い打ちをかける。緊急事態宣言などの外出抑制措置によって、図書館の臨時休館が相次いだのだ。また、自治体の予算がコロナ関連の対策費に向けられる中で、図書館向けの予算が削減されたケースもあったようだ。20年11月期には年売上高が約5億円に低迷しており、翌21年11月期には多少の回復が見られたものの、年売上高は約5億7000万円と、ピーク時の半分以下となっていた。
財務面も大きく毀損していた中で、コロナ融資などで凌いでいたものの、支え切れず自己破産を選択した。質の高い製品が必ずしも生き残れるわけではない。価格競争力とのバランスを考慮しながらの商品戦略が必要であり、特に入札のある自治体関連受注は、板挟みとなることも多いようだ。(帝国データバンク情報統括部)