写真の表現多彩に、注目「レンズフィルター」はカメラ市場を拡大させるか
コロナ禍の影響が薄れてデジタルカメラの需要が回復する中、写真の表現を多様化するレンズフィルターに注目が集まっている。フィルターをカメラレンズの先端に装着して撮影することで、解像度を落としたり、色味を加えたりできる。フィルター各社は製品の高機能化やカメラ以外での用途拡大、装着時の利便性向上など、顧客視点で工夫を凝らす。支持を広げてカメラ市場の拡大を後押しできるかも問われる。(阿部未沙子)
フィルターはレンズを保護する機能を持つほか、撮影した写真に効果を与える。四角や丸など形は多様で、被写体に合わせて選ぶ。例えば空の明るさを抑える目的で四角いフィルターを使い、風景を撮ることもある。
ケンコー・トキナー(東京都中野区)によると、「(柔らかい作品に仕上げられる)ソフトフィルターの人気がここ数年高まっている」。こうした需要を受けて光をにじませる効果を持つ製品を4月に発売する。また「星空の撮影への人気もある」ことから、光害を低減する機能と、星をはっきりと写せる機能を搭載した製品を6月に投入する。
マルミ光機(東京都台東区)は、意図的に写真の解像度を落として懐かしさを感じられるフィルターを扱う。写真家と共同開発し、2022年7月に発売。高橋薫開発設計課長は「好評をいただいている」と手応えを示す。ガラスの表面反射や構造を工夫することで「(レンズ面で複雑に反射を繰り返した光が画像として写る)ゴーストや(画像の一部や全体が白っぽくなる)フレアを起こし、写真らしさを表現した」(高橋課長)。
動画撮影などの需要に対応する観点で、22年12月には口径の大きいレンズに対応したフィルターも追加で発売。高橋課長は「反射をなくすなど、フィルターでしかできないことがある」と強みを語る。
また、ロカユニバーサルデザイン(東京都練馬区)の伊藤公彦社長は「フィルターで(写真に)味付けができる。スマートフォンにフィルターを付けて使うケースもある」と指摘。多様な使い方ができることを踏まえ、「フィルター市場は今後、広がっていくのではないか」と将来を見通す。同社製品の中では、写真家の監修を受けた「HASEOフィルター」が3日間で約200枚売れた実績を持ち、特に好評だという。
また香港のフィルター専業メーカーH&Yの製品を扱うレイクプラッツ(群馬県高崎市)の新井渉平最高経営責任者(CEO)は、「光学性能のほか、独自機構が好評だ」と話す。独自機構とは、例えば一つのフィルターをさまざまな口径のレンズに装着できる「レヴォリング機構」を指す。装着時の利便性が高まり、顧客は複数のフィルターを買わずに済む。
カメラ市場は復調の兆しが見られるものの、10年前と比べると市場は縮小傾向だ。カメラに興味を持った人々を市場に引き留めるためにも、フィルター各社は多彩な表現方法を顧客に提示していくことが求められる。
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