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米国自動車市場で浮上する警戒感…シリコンバレーバンク破綻の影響は?

中国も低迷

米国と中国の2大自動車市場で不透明感が増している。日系車メーカー4社合計の2月の米新車販売台数は前年同月比0・5%減の31万台と、2カ月連続で減少した。一方、日系車5社合計の2月の中国新車販売は同13・3%減の26万台と、5カ月連続でマイナスとなった。米国では金融不安による景気悪化への警戒感が浮上。中国では政府の景気刺激策への期待から買い控えも見られ、両市場で先行きを慎重に見極める動きが広がる。(西沢亮)

米国では2月も半導体不足に伴う生産制約の影響を受けたが、底堅い需要が継続。日系メーカーではSUBARU(スバル)が7カ月連続、マツダが5カ月連続で増加した。

調査会社のマークラインズによると、2月の米市場全体の新車販売(推定値を含む)は、前年同月比9・1%増の116万台と7カ月連続で増加。米メーカーではゼネラル・モーターズ(GM)が同14・7%増の18万台、テスラが同43・6%増の6万台だった。業界平均の在庫水準は依然低いが、販売奨励金(インセンティブ)は前月比で増加するなど、混沌とした市場環境が続く。

一方、米銀シリコンバレーバンクの経営破綻に伴い金融システムへの懸念が浮上。金融不安の広がりから、信用収縮による自動車ローンの活用減少などが見込まれ、ある自動車メーカー幹部は「需要のすそ野が狭まることが一番のリスク。そのの影響をよく見なければならない」と警戒する。

中国では2022年末に自動車取得税の減税といった優遇策が終了。春節(旧正月)の影響を踏まえた1―2月期の日系車5社合計の同国新車販売は、前年同期比33・6%減の49万台と低迷した。

2月単月ではトヨタ自動車が4カ月ぶりに増加に転じた。ただ同社は「3月の全国人民代表大会後の景気刺激策を期待する買い控えや、購置税減税終了の影響で市場が落ち込んだ」とみる。ある車メーカー幹部は電気自動車(EV)の需要は旺盛だが「小型車を中心にガソリン車の需要が細り、一部で値引きも見られる」とした。

中国汽車工業協会によると1―2月期の中国市場全体の新車販売は、前年同期比15・2%減の362万台だった。うちEVは同8・4%増の66万台。2月単月のEV販売は前年同月比43・9%増の37万台とけん引した。

一方、マークラインズによると1―2月期の同国新車販売を地域ごとにブランド別で見ると、中国系車メーカーは前年同期比0・1%増の165万台、独系は同21・2%減の59万台、日系は同40%減の48万台だった。EVなど新エネルギー車の需要の取り込みで、中国メーカーと明暗が分かれたとみられる。


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日刊工業新聞 2023年03月21日

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