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在庫削減率18.6%、センコーがAIで挑むスマート物流の今

在庫削減率18.6%、センコーがAIで挑むスマート物流の今

AIで物流拠点での在庫の最適化が可能に(センコーGHD提供)

センコーグループホールディングス(GHD)傘下のセンコー(大阪市北区)は人工知能(AI)を活用したスマート物流に取り組む。インダストリー・ワン(東京都千代田区)と共同で、AIを活用した物流拠点の在庫の最適化と発注業務の効率化に関する実証実験を実施し、一定の効果を確認した。今後、人手不足や余剰在庫など物流を取り巻く課題解決に向け、3月にも物流効率化に向けたサービスの提供開始を目指す。

両社は2021年12月―22年3月にセンコーが運営する物流センターで食品の商品を対象にシステムを実証。AI需要予測モデルによる推奨発注数の自動提案から、在庫削減と欠品の低減に関する効果を調べた。発注頻度が週に1回以上で出荷量が上位50%以上の商品で、欠品率を現行水準としつつ18・6%の在庫削減ができるとの試算結果を得た。

AIで商品の需要予測や在庫の最適化ができれば、センコーと卸売業などの顧客の両方にメリットがある。需要予測に関して、顧客は発注工数の削減や欠品率の低減、センコーは作業人員の削減が可能になる。在庫最適化サービスでは、顧客は保管物流費の低減や廃棄物の減少によるコスト抑制、センコーにとっては拡販スペースの創出や外部倉庫の削減などにつなげられる。

コロナ禍で在宅時間が増えたことで品物の配送ニーズが高まり、物流施設が増加している。AI導入の背景には業界の競争を勝ち抜くため差別化できるサービスを創出したいとの思いがある。センコーロジスティクス営業本部リテール物流営業部の千葉正慶部長は「物流コストの低減など効率化を付加価値として顧客に提供できなければ受注が減るのではないか」と危機感を募らせる。

実証実験の成果を踏まえ事業化に向けた検討を進める。現状では顧客がAIを活用した物流を実施する際、保管や配送などの事業を物流企業に、需要予測や在庫管理最適化のサービスをAIの開発企業などに委託している。千葉部長は「従来から行ってきた保管や配送に加え、需要予測や在庫最適化のサービスを一元化したい」と強調。その上で「予測精度の向上、ベンダーや卸売業者などの顧客を巻き込んだ開発が必要になる」と今後の課題を挙げる。社内での人材育成も重要な課題で「需要予測などができるデータ科学者の育成が必要」(千葉部長)とする。AIを活用し付加価値の高いサービスを提供することが生き残りのカギとなる。(大阪・冨井哲雄)

日刊工業新聞 2023年02月17日

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