鹿島が充実中、作業危険度を可視化する独自システムの中身
鹿島は建設現場の安全性向上を目指し、危険予知活動を支える仕組みを充実する。このほど、これから行う作業に潜む危険度を可視化した独自の「鹿島セーフナビ(K―SAFE)」を協力会社との連絡・調整に使う会議システムと連携。現場担当者に負担をかけることなく、作業の危険度把握と対策の立案・実施を行える体制を整えた。5年後をめどに効果を検証し、外販にも対応する。
鹿島は2021年にK―SAFEを開発し運用を始めた。人工知能(AI)の自然言語処理技術を用い、自社や厚生労働省、日本建設業連合会などが持つ約8万件の災害事例を解析・分類。これを現場の担当者が文章や単語で入力した作業内容と照合し、類似作業で発生した災害の度合いや発生状況・原因などを直感的な画面で表示する。結果は現場で共有し、災害を防ぐ。
今回、K―SAFEを連絡調整会議システムと連携させることで使い勝手を向上。現場担当者が会議システムに作業内容を入力する従来の業務フローの中で、これまで別々に取得していたK―SAFEの分析結果を受け取れるようにした。両システムは本社や本支店でも接続できるため、施工前の検討や管理者による安全パトロールといった用途での利用もしやすくなる。
K―SAFEの開発に当たった土木管理本部生産性推進部の横尾敦部長は「災害事例の情報だけでは危険予知活動が形骸化する可能性がある」と指摘。その上で「その原因となった事象までしっかり共有し、予定する作業でその事象が生じるリスクの有無まで想像することが重要だ」と強調する。協力会社からも好評で、危険予知活動の精度向上にも役立っているという。
建設現場では現場担当者の経験や知識、感覚を基に災害リスクを予測・対策する「危険予知活動」を必ず実施している。危険予知の精度は担当者が関連事例を多く参照することで高まるが、最適な事例を探すには時間を要する課題があった。また災害事例の内容や原因の記載にはバラツキがあり、どんな作業のどのような原因で発生した災害かを把握するのは困難だった。