トヨタとの業務資本提携で実務リード、マツダ社長に昇格する毛籠氏の覚悟
マツダは毛籠勝弘取締役専務執行役員(62)が社長に昇格する人事を決めた。丸本明社長(65)は相談役に就く。社長交代は5年ぶり。6月の株主総会後に就任する。菖蒲田清孝会長(63)は続投する。高付加価値製品の投入や経営効率の向上により、電動化やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)対応に向け、筋肉質な体制を構築する。
毛籠氏は2016―21年に北米法人のマツダモーターオブアメリカの最高経営責任者(CEO)を務め、販売網の強化やブランド価値経営の定着に貢献。丸本氏は毛籠氏について「北米を最も収益を上げる市場に変革してきた」と評価した。
丸本氏は前社長の小飼雅道相談役の下で副社長として経営を支え、17年のトヨタ自動車との業務資本提携では実務をリードした。18年6月に社長に就任。半導体不足など不透明な経営環境下でも、トヨタとの米合弁工場の稼働や付加価値の高いラージ商品群の展開や電動化技術など、ブランド価値向上への投資を計画通り実行した。併せて固定費の効率化や販売の質的成長などで収益基盤を強化してきた。
マツダは22年11月、30年に電気自動車(EV)比率を25―40%に高める電動化戦略をはじめとした経営方針を発表。新体制で同方針を具体化し実行する。毛籠氏は「ラージ商品群をドライバーに成長を軌道に乗せる」ことや「全社的な原価低減活動で経営効率を一層高める」ことを足元の課題として挙げる。新体制で長期的な変革への布石を打つ。
【略歴】毛籠勝弘氏 83年(昭58)京都産業大法卒、同年東洋工業(現マツダ)入社。13年常務執行役員、16年専務執行役員、19年取締役専務執行役員。京都府出身。
素顔/“和魂洋才”苦境乗り越える
技術系が2代続いたマツダの社長に営業畑の毛籠氏が就く。技術系ではない3代前の山内孝元社長が在任中の2008―13年は、リーマン・ショックや東日本大震災など外部環境が非常に厳しく、マツダも苦境にあった。「覚悟して再建を目指す山内氏の姿を見てきた」という。
マツダの屋台骨を支える海外事業が長い。グローバルマーケティング本部長や欧州現地法人の副社長、米国現地法人のCEOも経験した。「覚悟を決めて、この席にきた」と社長交代の会見での表情は穏やかながらも熱い思いを披露。また「全員の力を結集し、信頼され、必要と思われる会社になるよう引っ張っていきたい」と抱負を語る。
座右の銘は「和魂洋才」。「自分の由来をしっかり持ち、異なる文化を受け入れ、グローバルな仕事に取り組んできた」と振り返る。(広島総局長・大櫛茂成)
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