ニュースイッチ

三菱ケミカルが量産開始、リチウムイオン電池用新素材の効果

三菱ケミカルが量産開始、リチウムイオン電池用新素材の効果

量産を開始したスペーサー。電池の長寿命にも貢献する

三菱ケミカルグループは、リチウムイオン電池(LiB)の熱対策用の新素材(スペーサー)の量産を開始した。車載電池への採用が決まった。同素材はLiBセル間に設置し、通常は熱を逃がして安定した性能の発揮を助け、セルが短絡して異常な高温になると熱を遮断して延焼を防ぐ。電池の状態によって異なる役割を果たす。電解液や負極材に次ぐLiB材料として事業を育成する。

三菱ケミカルグループは新素材の量産にあたり、筑波工場(茨城県牛久市)に年2000枚の生産体制を整えた。投資額は明らかにしていない。

液体を含浸したシートを封入したパウチ形状で、隣のセルが異常な高温になると、液体が変質して遮熱や吸熱の機能を発揮する。通常時は熱を逃がして電池全体の温度を均一にする。また、収縮性を持ち、セルの膨張収縮に対応してセル間のギャップを調整。電池の寿命にも貢献する。

同社は利益率の高い機能商品部門の拡大を図っており、LiB材料を含む電気自動車(EV)やモビリティーは最重要戦略市場の一つ。LiB材料のうち電解液は国内外での増産や委託製造、ライセンス供与で積極的に伸ばしていく方針。

また、負極材は6―7月に中国で新工場を立ち上げ、LiBの長寿命化に寄与する新しい天然系黒鉛負極材を増産する。天然系の課題であり、電池寿命に影響する膨張を抑えた。製造工程における温室効果ガス排出量は人造系黒鉛に比べ大幅に少ない。


【関連記事】 EV普及へコストを下げられない企業は市場追放!電池材料メーカー“最後の戦い”
日刊工業新聞2023年3月20日

編集部のおすすめ