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慶応・早稲田・立命館も参画、東大VCの起業支援が“オールジャパン”目指す規模に

慶応・早稲田・立命館も参画、東大VCの起業支援が“オールジャパン”目指す規模に

SUの新事業案件の審査は、多数の大企業とVCが行う(東大IPC提供)

東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC、東京都文京区、植田浩輔社長)が複数大学と手がける起業支援プログラム「1st Round」(ファーストラウンド)に九州大学慶応義塾大学、立命館大学、早稲田大学が参画を決めた。政府支援のベンチャーキャピタル(VC)の東大IPCが確立した、利益優先でない公平な仕組みで引きつけた。政府支援VCを持つ他の3大学とは異なり、計13校が連携し“オールジャパン”を目指す規模に成長した。(編集委員・山本佳世子)

ファーストラウンドの支援対象は起業前から法人化3年以内で、VCからの資金調達経験がないスタートアップ(SU)創業期チームだ。年2回、計260―300チームから優れた16チームを選抜し、最大1000万円と半年間の手厚い伴走型支援を行う。ポイントは審査を各業界トップクラスの大企業(1業種1社)と複数の民間VCで行うことだ。

事務局の東大IPCは審査に加わらず、参加大学にとっては「把握できていなかった自校関連の超有望案件を発掘し、育成してくれる」場だ。大企業やVCにとっても超有望案件を絞り込み、その後の協業や投資につなげられる絶好の機会だ。

ハイレベルの案件で最適な事業形態を整えていくことから、「1年以内の資金調達率90%超」「大型助成金の採択率50%超」「大手との協業50%弱」と好成績を記録。公平で質の高い活動との評価が浸透し、大学の参加希望が広がっている。

インキュベーション、アクセラレーション、起業支援などの名が付くプログラムは、主催の民間VCがSUの株主になって支援する形が多い。大学やSUの成長や利益に反するケースも出てくる。対して同社では、企業約20社の協賛金(金額は非公表)で活動する。多額の国費投入を受けた立場のため、大学のエコシステム確立を優先するという。

政府資金のVCを持つのは他に東北大学京都大学大阪大学がある。ファーストラウンドは、指定国立大学も旧帝大も私立大学トップクラスもカバーする。SU輩出を各大学が競う一方、オールジャパンで効果を上げる点で注目される。

日刊工業新聞 2023年03月15日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
今回の「ニュース」は早慶立命と私学が参加したこと。それに、国立大は旧帝大と指定国立大を合わせた中から、東大と同様に官民プログラムで動く3大学を除いてすべて、カバーされるようになったことだ。「各大学とも自校関連のスタートアップで大物育成を競っているはずなのに、なぜ東大VCのリードを避けないのか?」が不思議だったが、取材で判明した理由を記事で紹介した。同時に、大学発SUが増えて多様になり、「各大学のSU支援組織やVCとの”クローズド”な関わりだけでは、収まらなくなっているのだな」とも感じた。

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