ロボットは飛行機を作れるか?

産総研、仏エアバスなど。ヒューマノイドに挑戦

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航空機組み立て(エアバス提供)
 ロボットは飛行機を作れるか-。産業技術総合研究所とフランス国立科学研究セター(CNRS)、欧エアバスは共同で、航空機を組み立てるヒューマノイドの開発を始めた。開発期間は4年間で、エアバスが数億円規模の研究費を拠出する。組み立て工程の計器の組み付けやパネル貼り、掃除など幅広い作業のロボット化を目指す。

 航空機を組み立てるには多種多様な作業が必要だ。作業員は身をよじりながら手を伸ばし、計器の裏の配線を確認するなど、全身を使った動作を繰り返す。この作業は同じ動作を繰り返すロボットでは実現できなかった。

「10年後には製造現場へ導入したい」(エアバス)


 そこで各作業の専用機ではなく、すべての作業に対応できるヒューマノイドが適任と判断した。エアバス・グループ・イノベーションズ(AGI)のセバスチャン・ルミ代表は「まずは4年間のプロジェクトを走らせ、10年後には製造現場へ導入したい」という。

 ヒューマノイドにとっては二足歩行の先の全身作業への挑戦だ。これまではがれきの上などの不整地を歩くことが研究の中核だった。下半身は歩行、上半身は簡単な動作などパーツごとに役割分担ができた。だが全身作業では手と脚の多点でバランスをとったり、作業をしながら姿勢制御したりと複数の動作を同時にこなす。

 この動作同士が相反する場合に、どんな優先順位をつけて意思決定するのか、その計算は破綻しないのか、など課題が山積みだ。仏CNRSシステム工学部門のジャン=イブ・マルザン部門長は「とても挑戦的な研究テーマだ」と評価する。実現すれば製造現場に限らず、あらゆる生活シーンでロボットが活躍できるようになる。

勝算は詳細な設計データ


 勝算はある。航空機内部は構造こそ複雑だが、詳細な設計データがある。未知の空間に比べてロボットが自身の位置を把握しやすく、体の動きを計算しやすい。ロボットの開発には有利な環境だ。

 そして掃除やネジ締め、計器の組み付けとタスクの難易度を段階的にデザインできる。道具の軌道計画ができれば掃除ができ、トルク制御が加わればネジ締め、ケーブル類などの柔軟物操作ができれば計器の組み付けができるなど、「技術を順にレベルアップさせられる」(産総研知能システム研究部門の吉田英一副研究部門長)。

 2020年のロボ五輪の競技種目にはハーネスの組み付けや弁当の食材詰めが検討されている。航空機組み立てはゴールが明確で、チームの技量に応じて挑戦するタスクを選べる。ヒト型やクローラー型など、分野横断的に技術者が集える種目になるだろう。

日刊工業新聞2016年02月17日ロボット面

COMMENT

体重を預けながらの作業は人間は難なくできる動作ですが、ロボットには非常に難しい動作でした。例えば近くの骨組みに体を預けながらバルブを回すことは、 人間なら自然にできてしまいます。自身の体が安定しているか、回す力で体勢が崩れないか、人間なら肌感覚でわかります。ロボットは関節にトルクセンサーを仕込んだり、体の表面に触覚センサーを巡らせる必要がありました。センシングもリアルタイムの計算処理もどちらも難しいです。ただ、航空機組み立ては、 たくさんのタスクがあるので簡単なタスクから攻略できます。産総研は良いシミュレーションソフトを持っているので、ハードを持てないチームも参加できます。なにより「飛行機が飛ぶ」のは夢があります。エアバスが許してくれればですが、ヒューマノイドに限定せず、いろんなロボットのベンチマークとして広がればと思います。 (日刊工業新聞社編集局科学技術部・小寺貴之)

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