春闘妥結したトヨタ、佐藤次期社長が会見で表明したこと
トヨタ自動車は15日、2023年春季労使交渉(春闘)が妥結したと発表した。初回交渉で賃金と一時金要求に満額回答したほか、年次や職歴ではなく挑戦やプロセスを評価する制度を導入するなど、人事制度を見直す。電気自動車(EV)戦略の加速をはじめとするモビリティーカンパニーへの変革に向け、イノベーション創出を重視する体制にかじを切る。
15日愛知県豊田市の本社で会見した佐藤恒治次期社長は「人への投資に取り組む。賃金・賞与の引き上げに加え社員が失敗を恐れず、挑戦し続けられる職場環境を整備する」と人事制度の見直しを表明した。
新制度の考え方として「多様性」「成長」「貢献」の3本柱を設定。年内にも育児休職を気兼ねなく取得できる環境を整備するほか、24年4月以降に若手社員中心にフリーエージェント(FA)制度を導入するなど個人の希望を尊重し「多様性」を実現する。また、3年以内には管理職になる前に出向や出張、研修などを通じ社外経験を原則必須化。24年1月からは業務職から専門職へ移れるようになるなど職種変更制度も導入して社員の「成長」を支援する。さらに社会や産業に「貢献」することを目指し、トヨタグループや仕入れ先からの人材要請に応えるために派遣形態を多様化する。
同人事制度の見直しは23年春の労使交渉を踏まえた議論の中で積み上げた。佐藤次期社長はこれまでの自動車産業は「業務を細分化し効率を上げるための体制だった」と指摘した。一方、イノベーションの創出やチャレンジには余力が必要で、これを生み出すために新たに約700人を採用することも明らかにした。
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日刊工業新聞 2023年03月16日