派遣業者の倒産劇、契機になった代表者の個人的事情
2022年10月5日、新都市情報システムは東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。同社は、1989年9月に設立。設立当初は、大手コンビニエンスストアの酒販部門のシステム構築、データ入力を請け負っていた。その後は各種システム運用スタッフや一般事務、コールセンター要員、家電販売員など各種要員の派遣に業態転換していた。
派遣部門は、サーバー運用・監視や衛星放送の監視、放送設備の運用・監視などの業務に常駐スタッフを派遣していたほか、家電量販店における販売員や一般事務などのデータ処理人員を派遣するなど多岐にわたっていた。派遣要員は正社員で採用し、独自のノウハウで短期間かつ低コストでの派遣が可能であったことから、取引先から指名受注も獲得、2018年3月期には年収入高約5億3400万円を計上していた。
しかし、同社は、従前から各種システム運用スタッフの人材需要に対し人材確保に苦慮していた。人材の退職が続き次第に業況は悪化傾向を辿っていた。改善に向けて手を打とうとしたところに、当社にとってはここから不運が続くこととなる。代表の個人的事情が重なったのだ。最初は、自身の両親の病気が発覚し、約2年にわたり介護に時間を割かれた。
介護が一段落したのもつかの間、次は配偶者の体調が悪化し、私生活に神経を使わざるを得なかった。経営者、息子、夫、それぞれの立場での役割に忙殺され、ついには自身の病気も発覚し、半年間経営から離れることになった。それでも会社の資金繰りは借入やリスケでつなぎ、本社移転や営業力強化など業務改善に取り組み、黒字転換を果たした。しかし、最後はとどめを刺すかのように、一部の債権者から債権の差し押さえを受け、事業継続を断念した。
今回のように代表者の病気や死亡をひとつの契機に事業が傾き、倒産に至るケースは後を絶たない。経営者の不在は日々の事業運営に大きな影響を及ぼす象徴的な事例であった。(帝国データバンク情報部)