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強烈な個性のぶつかり合い!日本最大級ハッカソンを制したのは?

「Yahoo! Japan HackDay2016」レポート(前編)
強烈な個性のぶつかり合い!日本最大級ハッカソンを制したのは?

佐野岳人さんと、開発中のリーマンズ

 日本最大級のハッカソンYahoo! Japan HackDay2016が開かれた。333人85チームのエンジニアやクリエイターが発想と開発力を競った。開発時間は24時間、プレゼンは90秒、テーマは自由で何でもありだ。肩に猫を載せ猫背を直すウェアラブルや、他人の不幸で炊いた飯など強烈な個性に圧倒される。

スマホ通過させるだけで料理が撮れる


 グランプリに輝いたのは実用的な「グルメスパイ」(http://gourmetspy.adriablue.jp)。スマホで料理を気付かれないように撮影するアプリだ。カメラなどを起動させることなく、スマホを料理の上を通過させる一瞬で撮影する。飲食店で写真を撮りまくる迷惑行為「フードポルノ」の防止につながるかもしれない。
 スマホを持ち上げるとジャイロや加速度センサーが検知し、自動で動画撮影を始める。皿など料理の面積が一番大きいフレームを選んで、おいしそうに画像を加工、画像検索で料理名を推定してタグをつけて投稿する。開発した広野萌(ひろの・はじめ)さんは「年内にリリースできるよう、アプリを仕上げたい」と目を細める。

 ゴールド賞はリーマン球面上のメビウス変換を球面ディスプレー上に可視化したチーム「リーマンズ」。蜘蛛の巣のようなグラフがディスプレー上でぬるぬる動く。人類はこの数学をきれいだと感じるらしい。
 メビウス変換は流体力学や音声解析など幅広い分野で使われる数学手法だ。佐野岳人さんは「虚数を扱う技術者ならいつもお世話になる手法。見える化したらキモ面白かった」という。審査員を務めた大阪大学の石黒浩特別教授は「普通の人には何の役に立つのかもわからない。だが数学をきれいと感じる超オタクをたたえることで本当のハッカーが育つ」と力説する。

紙をクリックすると次のページ印刷


 シルバー賞は藤木裕介さん率いる藤木一家。兄・妹・父の三人で参戦した。開発したのは紙でインターネットを巡る「IoP」だ。Pはペーパー(紙)。ウェブサイトをプリントアウトした紙をクリックすると、次のページが印刷される。紙でネットサーフィンができるため、ディスプレーに縛られることなく、ネットの世界に浸れる。藤木さんは「時代に逆行してみたかった」という。
 仕組みはクリックするデバイスにカメラがついており、画像認識でクリックする項目を特定する。裏でページキャッシュなどと付き合わせて、飛んだ先のページが印刷される。エコではないが、ユニバーサルなデザインと評価された。紙になれた世代もネットが楽しくなるかもしれない。

 ブロンズ賞は洗濯物自動たたみ機「BATAMU」を開発した筑波大学のチーム。段ボールの上にシャツを広げると左右、上下に折りたたんでくれる。一枚10秒の早業だ。神武里奈(こうたけ・りな)さんは「洗濯は家電で洗いから乾燥まで自動化できている。あとはたたむだけ」という。
 機構は非常にシンプルでパネルが順にひっくり返るだけ。パネルは段ボールで、安いモーターを組み合わせて完成させた。メーカーで洗濯たたみロボの開発も進んでいるが、BATAMUにコスト競争で勝てるのものがあるのかと思ってしまう。「今回は秋葉原・電気街で欲しいモーターが品切れていた。時間をかければもっとレベルアップできた」という。



 入賞作品以外にも面白い作品が溢れていた。入賞作とそれ以外は、かなり僅差だ。入賞作だけをみてもHack Dayの数%もわからない。会場を巡ると、たった24時間でここまでのモノが作れるのかと圧倒させられる。そして何ら役に立たない作品がたくさんある。くだらない作品に注がれた情熱は、となりのエンジニアを刺激し、よりくだらなくなっていく。そして仲間が増えていく。カオスの中でクリエイターたちのネットワークが育っている。
(文=小寺貴之)
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昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
プログラマーでない人も参加できる同ハッカソン。発想力の面白さや柔軟さに加え、限られた時間でそれをどう実現化するかも問われます。それにしても、皆さん楽しそうです。

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