メルカリが人文・社会学系の「大学の知」に注目するワケ
メルカリは自社の研究開発に、大学の人文・社会科学系の力を生かす手法を整備した。コミュニケーションやELSI(倫理的・法的・社会的課題)を含む研究テーマについて、審議の倫理指針を大阪大学社会技術共創研究センターとの共同研究で策定した。先進技術によるCツーC(消費者間)ビジネスでは、社会実装時に予想外のトラブルが起こりやすい。AI解析で起こる偏見など、ELSIのカバーに大学の知を活用する。

メルカリの研究開発組織「メルカリR4D」(アールフォーディー)には、博士人材を中心とした約10人の研究者が所属。フリーマーケットアプリケーションに関わる価値交換工学や人工知能(AI)だけでなく、言語・コミュニケーションなどの人文・社会科学系分野もカバーする。トップは、川原圭博東京大学教授がクロスアポイントメントで務めている。 社会性・倫理性に目配りする研究開発アドバイザリーボードには、大学人が多く参加している。同社の制度設計を学術的知見で裏付けるなど、貢献度は高いという。
社員の創造性や科学的思考力の向上も目指す。22年開始の「社会人博士支援制度」において、学際領域などを学ぶ3人を選んだ。同制度は、修士号所有相当の社員の大学院博士課程(後期)での学びが対象。
柔軟な雇用体系とし、職種や研究分野によらず学費支援や時短制度で後押しする。情報系や学際分野のデータ分野で支援が進んでいる。社員の価値創造に加え、産学連携先の開拓につながる。事例は今後、増える見込みだ。
日刊工業新聞 2023年02月23日
