仮想空間にオフィス再現、NTT系が試作するツールの全容
NTTコムウェア(東京都港区、黒岩真人社長)は2023年度にも、オフィスをメタバース(仮想空間)上に再現するコミュニケーションツールを試作する。実際の事務所をレーザースキャナーで測量し、高精細に再現。テレワークに従事する人でも、オフィスに出社しているような感覚で意思疎通が図れるようにする。NTTの次世代光通信基盤の構想「IOWN(アイオン)」の活用事例として開発中で、商用化も目指す。
仮想空間上で使うアバター(分身)も人の全身を撮影するなどして、本物に近い形での再現を図る。アバターが立つ位置や体の向きに応じて、音声が聞こえる方向も変わるようにする。NTTコムウェアは従来のメタバースにおける表現はアニメ調になりがちだったとみており、実際のオフィスをリアルに再現することで現実と仮想空間の乖離(かいり)の解消を目指す。
メタバースツールの商用化は3―4年後を見込む。主に仮想現実(VR)ゴーグルでの使用を想定しているが、スマートフォンやタブレット端末などでも使えるようにする方針。自宅やオフィスといった別々の場所にいる社員が集まる社内会議のほか、設備の運用保守業務での活用も視野に入れる。具体的なサービス内容は今後詰める。
NTTコムウェアは、NTTが3月に提供を始めるIOWNの低遅延技術「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」の活用事例としてメタバースツールの開発を進めてきた。APNを活用することで、同ツールの利用者は通信の遅延によるタイムラグを感じずに、仮想空間上でコミュニケーションを取れるようになる。
既にAPNを使った同ツールの試験環境を構築した。東京都品川区にあるNTTコムウェアの拠点に、同ツールのコンテンツ作成・処理を行うためのサーバー類を設置。品川区の拠点と、東京都港区の同社本社をAPNで接続し、本社内でVRゴーグルを装着した複数人のユーザー同士が会話できることを確認した。
APNのサービス提供自体は、NTT東日本やNTT西日本が担う。NTTコムウェアは、APNの運用状況を監視したり制御したりするオペレーションシステムの開発を手がけている。