新型SUV「クロストレック」試乗で記者が体感したスバルの思想
SUBARU(スバル)がクルマの安全・安心に資する基本性能に磨きをかけている。同社は2030年までに自車が関与する死亡交通事故ゼロを目指し、多方向から安全技術の開発を進めてきた。「走りを極めれば安全になる」という思想のもと、スムーズで快適な走行といった感性領域にも着目した最新技術を車両に搭載している。(増田晴香)
スバルは安全技術を「0次安全」「走行安全」「予防安全」「衝突安全」「つながる安全」の五つに分類。このうち走行安全は、車の基本である「走る・曲がる・止まる」を追求することで「どんな天候や路面状態でも普段と同じ安定した走行ができ、万が一の時も思い通りの運転で危険を回避できる」(技術本部技術開発部の小暮勝担当部長)という考え方だ。全輪駆動(AWD)技術や、快適性など数値に表れにくい“動的質感”へのアプローチがこれに貢献するという。
2月中旬、スバル研究実験センター(栃木県佐野市)で安全技術に関するメディア向けイベントが開かれ、記者は試乗プログラムを体験した。
同センターではさまざまな路面状況が再現されている。マンホールなどの凹凸やカーブを施した商品性評価路では、22年に発表した新型スポーツ多目的車(SUV)「クロストレック」に試乗した。
特徴的だったのがコーナリング時の安定性。揺れが想定されるカーブでも運転姿勢は大きく崩れることなく、凹凸での振動もほとんど感じなかった。人体構造まで踏み込んで設計したシートにより、頭部の揺れを抑えることで実現した。
登坂路では電気自動車(EV)「ソルテラ」のEV専用AWDシステムを体験。前後独立モーター駆動式を採用し、急勾配で凹凸の多い砂利道でもスムーズに走り出した。タイヤの空転もなくグリップ力を確認できた。
路面別に4輪の駆動力やブレーキなどを適切に制御するシステム「X―MODE」も試した。あらかじめ車速を設定しブレーキから足を離すと前進し、ステアリング操作のみで坂を登った。下り坂でも急に速度が上がることはなく、一定の車速を保ちながら安全に下ることができた。
スバルではエンジニア自身が車両のテスト走行を行い、動的質感など数値に表れない性能を開発に落とし込んできた。電動化時代も「まず我々がEVユーザーになり、机上では分からない問題点を洗い出す」(藤貫哲郎CTO〈最高技術責任者〉)ことで、差別化につなげる考えだ。
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