航空機に不可欠な部品、経産省が生産支援する「サマコバ磁石」って何?
経済産業省は永久磁石の一種「サマリウムコバルト磁石」の生産体制維持に向けた投資を支援する。永久磁石の主流はネオジム磁石だが、耐熱性に優れるサマコバ磁石は航空機などに不可欠な部品で、今後も一定の需要が見込まれる。中国との厳しい競争にさらされていることもあり、政策支援で安定供給体制を確保する。
年100トン以上の生産設備能力を維持する投資に補助金を出す。補助率は3分の1。経済安全保障推進法に基づく特定重要物資としてネオジム磁石とともに支援対象にした。永久磁石全体の予算枠は約250億円。申請を受け付けている。
サマコバ磁石はネオジム磁石が使用しにくい航空機エンジン周辺など高温環境下の用途があり、代替が難しい。
日本の国内生産量は直近10年以上、ほぼ横ばいで今後も一定の需要が続くとみられる。しかしネオジム磁石の国内需要が1万トン以上であるのに対し、サマコバ磁石は数百トンと小さく需要の急拡大は見込めない。また中国の低コスト攻勢を受けて、国内メーカーは投資に踏み切りにくく、設備の老朽化が進んでいる。撤退を検討するメーカーもあるという。
経産省では供給途絶リスクを警戒しており、設備の自動化、省エネなどで生産性を向上し、安定供給を維持するための投資が必要とみている。
主な生産国は中国と日本で、中国がシェアの大半を占める。経産省では中国企業の年間生産量は2400トンで日本のシェアは10%を下回ると推定。日本勢では信越化学工業、東芝マテリアル(横浜市磯子区)、トーキン(宮城県白石市)などが生産している。
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日刊工業新聞 2023年02月23日