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ラクダに乗って考える、「タイパ」生活

乾燥しきった砂漠を闊歩している立派な体つきのラクダを見て、喉が乾いているのではないかと心配することはあまりない。

らくだの象徴ともいえる大きなコブには水が入っていると、子供の頃は思い込んでいた。大きな水筒を二つ背中に背負っているイメージだった。実際には、何が入っているのか。チャプチャプ音をさせながら砂漠を旅しているのかと思いきや、コブの正体は脂肪の塊だそうだ。

ラクダは長い期間食べ物を口にしないと、このコブに蓄えられている脂肪が少しずつ使われて、日に日に萎んでいくらしい。大抵の人は、背中が真っ平のラクダなんて見たことがないだろう。いずれにせよ長旅をするには、コブが大きい方が有利ということだろう。過酷な環境でも生きていくために、十分な栄養を蓄積しておくというのは、実によくできている。

日本の日常でよく見る風景。長期連休があるとコストコには長蛇の列ができる。そして中には、一般的スーパーマーケットの2倍はあるだろう重量感のあるカートを押しながら、広い敷地をぐるぐると回りながら商品を物色する人でごった返している。

刺身用サーモンは軽く1キロ以上あるし、即席味噌汁も何十食も入っている。洗濯洗剤もガロン単位で売っていて、大家族ではないと縁がないように消費しきれないようにも見える。少し前までは友達同士で分ける人も多かったが、今は単一のファミリーも多く見受けられる。

レジに目を移すと、2万円、3万円、4万円という文字が表示されており、普通のスーパーマーケットより圧倒的に1人あたりの単価も高い。大容量のものをまとめ買いするのはなぜだろうか。

ラクダのように、脂肪を溜め込んでおかなければ、生命の危機に晒されるという状況にあるわけでもないのに、だ。

人がまとめ買いをする理由の一つは、最近流行りのタイパ(タイムパフォーマンス)とも関係するかもしれない。買い物に関する可処分時間を減らして、QOL(クオリティ オブ ライフ)を上げたいと思うのは、多くの人の思いではないだろうか。日用雑貨で大容量のものを購入し、それをうまく使いこなせれば、時間が有効に使えるだけでない。家にストックがあると思えば安心感が生まれるというものだ。

トイレットペーパーで通常の何倍も巻いてあるものがある。少し割高でも、一度使い始めるとなかなか戻れないシロモノだ。たかがトイレットペーパーの大容量化ではない。身近なものであればあるほど、容量の大きさはQOLに影響してくる。

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