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ヤマト10%・佐川8%…エネ高騰・労働コスト増で「宅配便」に及ぶ値上げの波

ヤマト10%・佐川8%…エネ高騰・労働コスト増で「宅配便」に及ぶ値上げの波

人手不足や燃料費高騰で宅配便の値上げが相次ぐ(イメージ)

値上げの波が宅配便にも及んでいる。ヤマト運輸は個人利用の宅配便の運賃を4月3日から平均約10%値上げすると発表。同時に法人顧客に対して個別に値上げ交渉を進める。佐川急便も4月1日から約8%値上げする方針を示す。電子商取引(EC)の隆盛で宅配便取り扱い個数は右肩上がりで増えている上、折からの人手不足に加えて燃料費の高騰も各社の業績の重しとなる。値上げにより収益を改善し、持続可能な宅配便を実現する構えだ。

両社とも値上げはおよそ5年半ぶりとなる。ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングス(HD)は値上げの理由について「賃金・時給単価の上昇、原材料エネルギー価格の上昇、そして(トラック運転手の時間外労働規制が強化される)2024年問題への対応」(栗栖利蔵副社長)と説明する。さらに、「非常に変化の激しい環境が続いており、年度ごとに運賃の更新をしたい」(同)との考えを示した。

佐川急便も値上げの理由に「エネルギーや施設・車両などの価格高騰および労働コストの上昇、2024年問題に対応した従業員とパートナー企業の労働環境改善」などを挙げる。法人顧客との個別交渉も進めている。

ヤマトHDと佐川急便を傘下に持つSGHDはともに1、2月に23年3月期連結業績見通しを下方修正した。特にヤマトHDは営業利益で前回予想比140億円減の610億円(前期比21・0%減)と、宅配便の単価の下落と人件費や燃料費の増加によって大幅な減益を予想する。

国土交通省によると、21年度の宅配便取り扱い個数は7年連続で過去最多を更新する49億5300万個となった。背景にはECサイト利用者の拡大があるが、コロナ禍における巣ごもり需要の増大でこうした傾向に拍車がかかった。一方で、単価の安い小型の荷物があふれた結果、各社の収益を圧迫する。

さらに、国交省が22年10月に実施した宅配便のサンプル調査によると、再配達率は11・8%と過去2年間、横ばいが続いており、トラック運転手の業務負担増につながる再配達率の改善も進まない。

各社とも宅配便の値上げによって従業員や外部委託の運転手の処遇改善などにつなげ、人手不足の解消や収益の改善に役立てたい考えだが、成否は物量の大半を占める大口顧客との個別交渉次第となる。合わせて生産性の向上などの構造改革も進め、一層のコスト削減に努めていく。

日刊工業新聞 2023年02月08日

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