「最後の砦」としてのインフラが子どもと地域を守る
日本では豪雨災害が頻発に起きるなど異常気象が異常ではなく日常になりつつある。いかに被害を防ぐか、インフラ整備の取り組みも目立ち始めた。特に指摘されるのが、長期停電になっても自立稼働が可能な分散型エネルギーの必要性だ。中でも病院や福祉施設、保育園など命を預かる場所での対応は急務になっている。
「星の王子さま」の保育園
JR南武線稲田堤駅、京王線京王稲田堤駅から2分ほど歩くと閑静な住宅地の一角に巨大な建築物が姿を現す。星の子愛児園(川崎市)だ。仏文学者サン・テグジュペリの小説「星の王子さま」に出てくる「帽子」をモチーフに設計された建物は保育園というよりも工場や宇宙線のような印象を抱かせる、
敷地内に足を踏み入れると園庭には独特の形状の遊具や井戸水を利用したビオトープが目に入る。玄関は吹き抜けで天井は高い。広く開放的な雰囲気に満ちている。
「子どもたちが思わず駆け出したくなる。そんな設計をお願いしました」。近藤康子副理事長は語る。
星の子愛児園は一時保育、地域子育て支援センター、ふれあい子育てサポートセンターの3事業を併設した多機能型保育園だ。なぜ3事業を手掛けているのか。「地域が保育に何を求めているのかは時代によっても変わります。保育園に通う子どもだけでなく、保育園に入っていない子や入れない子もいつでも入ってきて遊べる場所、どんなときでも守れる場所が必要ではと思いました」(近藤副理事長)。
「災害に強い」が導入理由
子どもたちをどんなときでも守る取り組みのひとつがLPガスの導入だ。川崎市は都市ガスの普及率が非常に高い地域だ。園が都市ガスを使える場所でありながら、LPガスを導入した背景には「災害時の備え」がある。
園には電源自立型 20 馬力 GHP(ガスヒートポンプエアコン)4台とLPガス貯槽とガスメーター、調整器、ガス栓などを一体化したバルク(498kg,と298kgの2 基)を2022年2月に設置した。電源自立型のGHPを入れているので、災害時に電気などのインフラが寸断してもライフランは確保できる。空調も稼働できるため子どもたちは暑さや寒さをしのげる。三階建ての建屋の各階には非常用コンセントも設けている。
近藤副理事長は「LPガス導入は園だけのためではありません」とも説く。
同園を運営する厚生館福祉会の歴史は半世紀以上の歴史を持つ。1952年に医師であった近藤みね氏が保育園を創業したことに始まる。みね氏は当初、老人のための施設を構想していたが、子どもの健康事情が良くない時代背景もあり、教育と衛生の観点から保育園を開園した。「地域にも卒業生が多く、園は地域とともに発展してきました。地域とのつながりは非常に深い。地域の子どもたちの交流の場にとどまらず、災害に強い施設として防災の要にもできるのでは」とLPガス導入の決め手を説明する。
すでに、園は川崎市から災害時の帰宅困難者一時滞在施設に指定されている。駅から近い立地のため、大規模災害で鉄道など公共交通機関が停止した際に一時滞在施設として帰宅困難者を約100人受け入れられる体制を整えている。子どもたちの緊急時の食料はもちろん、避難者用に市から支給された食料も備蓄している。避難施設として活用してもらうことで災害バルク補助金(災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金)に採択され、LPガスの初期投資も軽減できた。
変わるものと変わらないもの
貧困や格差の拡大など、子どもを取り巻く環境は大きく変わっている。近藤副理事長は「今は子どもを家庭だけで守るのではなく、地域と社会で守る時代になってきています。私たちの施設がその入り口になれば」と使命感を語る。
子どもや地域に安全と安心を。社会は変わっても保育園の重要性は変わらない。そして、インフラの使命も変わらない。LPガスは緊急時のエネルギー供給の「最後の砦」としてこれからも地域を支える。
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