環境分野に流れる資金…金融9商品の発行・融資5兆円超えの内訳
グリーンボンド(環境債)やサステナビリティーボンド(サステナ債)など環境事業に使う資金調達を目的とした金融9商品の2022年の国内の発行・融資の総額が5兆円を突破したことが分かった。環境債が初めて2兆円を超えたほか、商品が多様化して地方の企業や地域金融機関にも活用が広がった。政府は脱炭素に向けて今後10年で官民合計150兆円の投資が必要としており、環境分野への資金の流れが鮮明になってきた。
9商品は環境債やサステナ債、グリーンローン、サステナビリティー・リンク・ボンド、トランジションボンドなど。環境省の「グリーンファイナンスポータル」と各社の報道発表を基に集計した。
環境債は合計95件、総額の2兆327億円の発行があった。件数は前年から4件減ったが、総額は前年比9・0%増。ホンダが3月、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)などの開発目的に27億5000万ドル(3025億円、集計では1ドル=110円換算)を発行した。
このほかに川崎重工業やサンケン電気、ひかり味噌(長野県下諏訪町)、ミネベアミツミなどが初めて起債した。
サステナ債は同27・7%減の7823億円。大型発行があった前年からの反動減もあるが、商品が多様化した影響がある。グリーンローンは同4・7倍の7576億円、融資に目標設定が必要となるサステナビリティー・リンク・ローンは同88・9%増の6764億円。四国化成ホールディングスや一正蒲鉾など地方企業による資金調達が目立った。また、サステナビリティー・リンク・ボンドは同2・5倍の3150億円だった。
トランジション金融は、エネルギー産業などの段階的な脱炭素移行を支援する。ENEOSホールディングスが発行した1000億円のトランジション・リンク・ボンド、中国電力が契約した1000億円のトランジション・リンク・ローンを含め、22年のトランジジョン関連は5500億円以上だったとみられる。
政府は20兆円規模の「GX(グリーン・トランスフォーメーション)経済移行債」を発行し、脱炭素分野に資金を呼び込む方針。商品が多様化しており、企業も脱炭素に向けた資金調達を活発化させそうだ。