「意地をかけて作った」…ピッチ長1.9mm「世界最小チェーン」が生まれた舞台裏
椿本チエインは、ピッチ長1・9ミリメートルと世界最小(同社推定)の産業用チェーン「RS6」を2022年12月に開発した。自動化に貢献するロボットのハンド部の駆動用などで提案を始動。パワトラ商品企画部の高尾勲チェーン・スプロケット企画課長は「自動化や装置の小型化が進む中、小さな伝動部品が必要となり同チェーンが企画された」とする。
21年4月に技術や企画の担当者ら8人が集まり開発が始まった。同社の従来の最小チェーンはピッチ長3・7ミリメートル。内・外のリンクプレートやピン、ブシュ、ローラーの基本5部品の構成は変えず、大幅な小型化を図った。開発に関わったチェーン事業部の二階堂祥雄製品開発課長は「材料面から検討し、ステンレスで最適なものを見つけ、特殊な処理を施し強度を持たせた。コンピューター解析や疲労試験などを繰り返し、約1年半で形にできた」と振り返る。
ピッチ長以外の基本仕様は幅2・8ミリ、高さ2ミリメートル、1メートル当たり重量は17グラム。引っ張り強さは360ニュートン(約36キログラム)、許容張力は70ニュートン(約7キログラム)を実現した。同チェーン対応のスプロケット(歯車)も同時に開発した。
パワトラ商品企画部の山根健太郎参事は「産業用チェーンで世界シェアトップの意地をかけて作った、世界最小チェーンをしっかり売り込みたい」と強調する。現時点でRS6の具体的な採用案件は決まっていないが、従来のワイヤを用いた駆動からの代替などを図り、より精度を出せる性能を訴える。
22年12月には半導体関連の展示会に参考出展し、ロボットハンドの5本指を動かす駆動部でPR。23年も食品機械やロボットの展示会で提案を続ける。
「ロボットハンドでは手術支援用ロボットへの応用、作物をつかんだり切ったりする農業分野や玩具業界でも提案する」(高尾課長)。一定量の受注を確保し、量産は産業用チェーンを生産する京田辺工場(京都府京田辺市)で24年度中をめどに行う計画だ。