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耐熱合金の熱処理プロセス設計を100倍以上高速化、物材機構と名大が開発したスゴい技術

耐熱合金の熱処理プロセス設計を100倍以上高速化、物材機構と名大が開発したスゴい技術

耐熱合金の熱処理と強度のプロセスマップ(イメージ=物材機構提供)

物質・材料研究機構の長田俊郎主幹研究員と出村雅彦SIP―MIラボ長、名古屋大学の小山敏幸教授らは、耐熱合金の熱処理のプロセス設計を100倍以上高速化するシミュレーション技術を開発した。熱処理で結晶が成長する過程を再現し、得られた金属組織から強度を予測する。耐熱合金は実験に半月以上かかるが半日以内で計算できる。耐熱温度を上昇することで航空機エンジンの燃費が改善する。脱炭素化につなげる狙いだ。

ニッケル基耐熱合金の熱処理プロセスを最適化する。実際に材料を作ると熱処理に5日、合金の微細構造の観察に3日、高温機械試験に1週間から2週間かかる。これをシミュレーションで半日以下に短縮する。まずフェーズフィールド法で熱処理中に特定の金属相が析出する過程を再現する。

この金属組織から特徴量を抽出する。特徴量にポアソン比や逆位相界面エネルギーなどのデータを加えて高温での特性を予測する。特性から引っ張り強度や耐力を求める。

このシステムを用いて熱処理の210条件分を求め、プロセスマップを作成した。210条件の実験には5年以上かかるため、これまでは現実的にはプロセスマップを作ることはできなかった。

実験データを反映させたプロセスマップがあると、設備に合わせて熱処理温度を容易に調整できる。論文では特定条件での最良のデータだけを示すことが多い。

研究では800度Cの熱処理炉を用いても、量産には600度Cの炉が適しているといった装置の制約がある。

プロセスマップは装置ごとの条件探索の負荷を下げられる。材料特許のような知財となり、大学や研究機関にとっては”商品”になりえる。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で開発した。

日刊工業新聞 2023年02月02日

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