出荷額前年割れ…電子部品需要にかかる下押し圧力の正体
中国の景気減速で電子部品需要に一段と下押し圧力がかかっている。電子情報技術産業協会(JEITA)が31日発表した日本メーカーによる2022年11月の電子部品世界出荷額は、前年同月比3%減の3832億円だった。ドル換算では3月から前年割れが続いていたが、今回、円換算でも7カ月ぶりのマイナスとなった。中国でのスマートフォンの生産縮小やデータセンター(DC)投資の鈍化が影響した。為替の円安効果も薄まっており、12月以降も前年割れが続く可能性がある。(山田邦和)
自動車やスマホなどの中で電気を一時的に蓄えたり放出したりして、回路のノイズを除去し、電圧を安定させるコンデンサーは前年同月比7%減の1248億円。コンデンサーと組み合わせて電流の波をなだらかにするインダクターも同7%減の267億円だった。スマホ内蔵カメラの手ぶれ防止などに必要なアクチュエーターは同4%減の426億円で、20年9月以来、2年2カ月ぶりにマイナスに転じた。
全体の3割以上を占める最大市場である中国向けの出荷が同11%減少したことが大きい。中国では新型コロナウイルス感染を徹底して抑え込むゼロコロナ政策が経済活動の足かせとなり、10―12月期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比2・9%増と、7―9月期(同3・9%増)から減速。収入が減った消費者が出費を抑えたり、企業が投資を見直したりした影響が電子部品にも波及している。
特に大きいのが、米アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)」の変動。アップルは22年11月上旬、アイフォーンの最新型「14」シリーズの上位機種を生産する中国・河南省の工場がゼロコロナ政策の一環で生産能力を落としたと発表した。同工場は世界のアイフォーンの約半分を手がけるとされる。半導体不足に伴う値上げの影響などで中華系スマホの販売が伸び悩む中、これまではアイフォーンがスマホ需要を下支えしていた。その構図が崩れたことでコンデンサーやインダクター、アクチュエーターの需要が減少したとみられる。
中国ではDC関連の需要も調整感が強まっている。クラウドサービスの拡大に伴ってDC投資を拡大してきた米大手IT4社(GAFA)の一部が、業績鈍化を受けて投資を絞り始めた。変調が顕著なのは中国で、同国のクラウド関連サービス支出は22年4―6月期に前年同期からの増加率が初めて20%を下回り、世界全体の伸び率に対しても大きく下振れたとの統計もある。
中国は22年12月にゼロコロナ政策を大幅緩和。アップルの中国工場も23年1月、操業をほぼ全面再開したとされる。ただ電子部品の出荷額は今後も前年割れが続く可能性がある。22年12月以降、円相場が円高に動いているためだ。ドル建てで取引される電子部品にとって、円安は輸出額を実態以上に押し上げる要因。22年は急速に円安が進み、一時対ドルで約32年ぶりの安値をつけた。このため5月以降、ドル建てでは前年同月比マイナスにもかかわらず、円建てではプラスの状況が続いていた。
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