感度6倍センサー開発、有機半導体活用で回転機器を予知保全
パイクリスタルが実現
ダイセル子会社のパイクリスタル(千葉県柏市、岡本和樹社長)は、有機半導体を使った回転機器の予知保全向けセンサーを開発した。東北電力が上越火力発電所(新潟県上越市)に導入した自動パトロールシステムに採用された。初めての採用実績となる。発電所や化学プラントなどでは設備の巡回点検で人手不足や技能伝承が課題。製造設備の点検業務の効率化を狙い、業種を問わず広く同センサーを提案する。
パイクリスタルは東京大学発ベンチャーで2020年1月にダイセル傘下に入った。センサーが採用された上越火力のシステムはロボットや人工知能(AI)を用いて設備の巡視点検を自動化するもので、東北電力とBIPROGY(ビプロジー、旧日本ユニシス)が共同開発した。
パイクリスタルのセンサー「高感度有機フィルム振動センサデバイス」は、回転機器の故障につながる異常兆候を早期に発見するのが特徴。ナノスケールの薄膜である有機半導体を採用し、小さな振動でも電気抵抗が大きく変動するため、一般的な振動センサーの6倍以上の感度で検知が可能という。
有機半導体はシリコンなど無機半導体と異なり印刷による半導体成膜が可能で、無機半導体で使う高額な装置が不要となりコストを低減できる。低コストで設置箇所を増やせるため、システムの信頼性向上につながる。
日刊工業新聞 2023年01月30日