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電子処方箋が解禁、スタートアップはどう見る?

紙の処方箋を電子化し、医師と薬剤師がオンラインでやり取りする「電子処方箋」が26日から全国で始まる。

これにより患者のデータを一元管理し、医療機関が処方歴などを正確に把握できるようになり、適切な服薬につながる。また薬のネット販売に弾みもつく。この商機を、オンライン薬局を手がけるスタートアップはどう見ているのか聞いた。

女性をターゲット

PharmaX(東京都新宿区) 辻裕介代表

―オンライン薬局事業の状況は。

現在は女性のPMS(月経前症候群)や更年期などの不定愁訴の症状にターゲットを絞っている。漢方薬やサプリメントなどを組み合わせて提供している。患者からすれば市販薬であろうと処方薬であろうと、「自分の悩み」を解決できれば良いはずだ。

対面の薬局はあらゆるところからやってくる処方箋に対応する必要がある。オンライン薬局の特徴は価値を感じてくれる特定の患者に向けてサービスを提供できる点だ。当社はオンラインチャットなどで、患者の相談に乗っている。体調の変化などを把握し、薬剤師がフォローしていく形式だ。薬局が「ただ薬をもらいに行く場所」ではなく、「自分の体調を相談できる場所」に変えていく。すでに登録者は20万人を超えており、リピート率も高い。

―電子処方箋が始まります。

まず想定しうるのは、オンライン診療を受けた患者が電子処方箋を使う例だ。ただ、オンライン診療の普及率は低い。そうなると、対面診療の処方箋をいかにオンライン薬局に持ち込んでもらえるかがカギだ。株主でもあるKDDIとの協業で、顧客を呼び込む施策も検討する。

―オンライン薬局にとって処方薬の市場は小さいということでしょうか。

現状ではそうだ。だが在宅医療や希少疾患などの領域では需要が大きいのではないか。定期的に同じ薬が必要な患者にとって、配送のスピードは差別化点にならないはずだ。そこでオンライン薬局の強みが生かせる。継続的に自分自身の体調を相談したいというニーズに答えやすい領域に注力していく。

医療との連携がカギ

ミナカラ(東京都千代田区) 喜納信也取締役

―現状、市販薬を中心にネット販売を行っています。

オンラインで買いたい薬に注力している。育毛剤や感染症など対面では買いづらい薬を買いたいニーズは多い。オンラインは、病院や薬局が営業している時間に行けない20代など、既存の医療の仕組みに合わないユーザーに合っている。既存の仕組みの置き換えというよりも、医療を拡張していく側面もあるのではないか。

―電子処方箋が始まります。

現状、ネットでの薬の販売というマーケットはないに等しい。そのため当社でもニッチな需要にターゲットを絞っている。処方薬においても状況は同じだ。今後は市販薬を買ってくれているユーザーを処方薬のマーケットに取り込んでいくことが必要だ。とはいえ、電子処方箋によって即時性が増す点は大きい。

―処方薬にユーザーを取り込むために必要な施策は。

オンラインでの服薬指導をより使いやすくする必要はある。医療の上流である診療を握らないことには、オンライン服薬指導の普及は難しい。

当社も「ミナカラオンラインクリニック」というオンラインで診察から薬の受け取りまでをシームレスにつなげるサービスを行っている。加えて、メドレーとNTTドコモとも連携する。メドレーのオンライン診療システムが持つ医師の基盤、ドコモのDメニューの顧客、当社の服薬指導を組み合わせ、患者をそれぞれのサービスに呼び込む体制を作りたい。

この分野はeコマースの考え方ではポジションを取れないと考えている。より医療機関を巻き込む必要がある。また、薬局にはそれに合わせたオペレーションの変化も必要だ。処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントなどを組み合わせ患者に最適なアドバイスができる体制が求められる。

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