背景に手形操作か、“連鎖”生んだ医業コンサル倒産の顛末
アイテックは、1981年5月に設立された総合医業コンサルティング業者。国内の病院新規開設・移転に伴う基本構想や現状調査・分析、建設予定地選定、運営システムや付帯設備納入、経営改善支援など一連のコンサルティングを行っていた。また、医療インフラが未整備の国に対して、国際協力機構の日本政府開発援助プロジェクトや国際協力銀行の有償援助プロジェクトも手がけており、イラク復興支援にも関与。こうした業態であることから取引先や出資先には各業界の大手企業が並ぶ、ある意味で特別な立ち位置にあった企業だったが、2022年10月17日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。
倒産理由として、民事再生の申立書には下記の内容が記載されている。海外関連の事業については、09年ごろよりイスラム過激派によるテロなどの政情不安が発生。病院建設工事の遅延やコンサル料の支払い遅延が頻発したほか、民間警備会社に対する費用や外注費などで支出が増加した。以降も、為替変動による差損が発生するなど海外事業での損失が続き、国内事業の強化を図ったものの支え切れなかった。
しかしながら、直近決算である22年4月期の年収入高約161億6445万円で、最終黒字。貸借対照表上でも約20億円の資産超過となっている。また、負債総額132億円のうち、大半が金融機関の手形割引残や一般取引先に対する手形債権であることが判明。その後、大口の手形債権者となっていたコーケン(東京都港区)や、アイテックの子会社であるジェミック(同中央区)が相次いで連鎖倒産した。現時点では、アイテックの倒産理由だけでなくこれら連鎖倒産の背景も十分には分かっていないが、何らかの手形操作がなされていたのではないかとの疑念が、業界で取り沙汰されている。再生手続きの行方に注目が集まる。(帝国データバンク情報統括部)