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農水産物輸出、「2020年1兆円」目標は前倒し達成濃厚に

昨年は22%増の7452億円。和食ブーム後押し
 農林水産省が2日に発表した2015年の農林水産物・食品の輸出額が前年比21・8%増の7452億円となり、過去最高だった。3年連続の最高額更新で、16年に7000億円の中間目標値を1年前倒しで達成した。20年に1兆円の目標も前倒し達成する可能性が濃厚だ。輸出先の主なものは香港、米国、台湾、中国、韓国、タイなど。中国景気失速や株価急落も「影響は今のところ表れていない」(同省)という。

 輸出額は12年まで、5000億円前後が壁になっていた。13年以降、急激に伸びたのは和食が世界無形文化遺産になったことの押し上げ効果と、政府が輸出アピールを積極的に進めたことが大きい。「輸出が伸びたことで、国内市場ばかりに気を取られていた内向き志向の農家にも輸出で稼ごうとの機運が生まれた」(農水省)。

 食品輸出の円建て比率は82・1%と高く、徐々に上昇している。同省は為替リスクをおそれる中小農業者の比率が高まったためとみている。

 品目別で多いのは水産物のホタテ貝、真珠、果実のリンゴなど。日本酒やウイスキー、ビールも貢献度が高い。ウイスキーは国際品評会に国産ウイスキーが多数入賞し評価が高まったこと、ビールは韓国の人気が高いのが影響しているという。菓子類も伸びている。「コアラや『キティーちゃん』などのキャラクター菓子はアジアで人気が高く、現地生産品よりも日本産パッケージに価値ありとして売れている」(同)。

 牛肉は15年に82億円から110億円、緑茶は78億円から101億円に伸びた。「環太平洋連携協定(TPP)の関税引き下げで、これからは米国への輸出増加も期待できる」(同)と話す。コメやイチゴ、ナシなども伸びている。青果物は日持ちしないので輸出が難しかったが、「最近は輸送技術の進歩でおいしいものを現地に届けられるようになり、日本産フルーツの甘さや形の良さが評価されている」(同)。

 3年間で増加したとはいえ、輸出額自体は全世界で50番台とまだ低い。1位の米国や2位のオランダなどに比べると開きがある。10兆円とされるオランダ並になるには、品目別マーケティングや、コスト削減の努力が必要。国内農業の次の課題となる。
日刊工業新聞2016年2月3日2面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
意欲ある生産者は多い。特にアジアなどで日本の果物の人気は高い。あとは海外の販路をどのように確保できるか。それを支援する企業(仲介者)の役割が重要になる。

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