新型コロナ流行とたぬきの食生活の関係、東京農工大が明らかにしたこと
東京農工大学の小池伸介教授らは、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う人間活動の低下がタヌキやアナグマの食生活に影響を与えることを明らかにした。樹木から落ちた果実に対し両動物の採食行動をカメラで観察。コロナ禍前は夜を中心に果実を取っていたが、コロナ禍で人間活動が減ると昼間にも果実を採取していることが分かった。少子高齢化に伴い人間活動の低下する地域での野生動物の管理や保全に向けた知見として役立つ。
米イリノイ大学との共同研究。成果は米科学誌エコロジー・アンド・エボリューションに掲載された。
2019年と20年で東京都三鷹市の都市の森林に生息するタヌキとニホンアナグマを対象に自動撮影カメラで樹木から落ちたイチョウとムクノキの果実を食べる行動を観察した。両年で両動物の採食行動の観察回数はほぼ同じだった。一方、19年には両動物の落下果実の採食行動はほぼ夜間に観察されたが、20年には昼間にも採食の観察機会が増えた。さらに1回当たりの採食時間も長くなった。また人間活動が盛んな時はやぶなど周囲からの見通しが悪い場所にある木を選んで採食していたが、人間活動が低下することで実りの多い木を選んで採食していることが分かった。
19年末から始まったコロナ禍により世界では都市封鎖や外出自粛が行われた。そのため交通事故による死亡の減少など、人間活動の低下は世界の野生動物の活動に影響を及ぼしている。
日刊工業新聞 2023年1月5日