ニュースイッチ

アナログ半導体「再編」台風の目、SIIセミコンが車載向けセンサーに参入

腕時計などの開発・生産で培った「匠・小・省」の技術を展開
 エスアイアイ・セミコンダクタ(SIIセミコン、千葉市美浜区)は、車載向けセンサー事業に本格参入する。まず2016年度内に磁気を検知するホールICの量産を始め、その後、温度センサーなどにラインアップを広げる。自動車のIT化に伴って車載向けセンサー市場が伸びる見通し。SIIセミコンは、小型サイズと省エネ性を特徴とする製品を開発し、需要を取り込む。

 SIIセミコンはセイコーインスツル(SII)の半導体事業が分離し1月に発足した。SIIが60%、日本政策投資銀行が40%を出資する。

 SIIセミコンは品質や耐久性を高めた車載向けセンサーを13年に試作した。このほど車メーカーへの納入が決まり、事業拡大の手応えが得られたことから本格展開に乗り出す。セイコーグループとして腕時計関連事業などで培ってきた精密技術を生かし、小型化や燃費性能の改善にもつながる消費電力を抑えたセンサーを幅広く開発する。

 SIIセミコンの16年3月期の売上高は約300億円の見通し。このうち車載向け比率は約20%。今後、5年以内に同比率を30%に引き上げる方針を示しており、センサーを車載向けの主力製品の一つに育てていきたい考えだ。

 ホールICは主に位置検出に使って、車では電動パワーステアリングやドアなどに搭載する。温度センサーは室内温度や、熱に弱い部品の周辺温度を監視する用途などで使う。自動運転機能や先進運転支援システム(ADAS)を搭載した次世代車は、数多くのセンサーを搭載する見通し。
後藤信之
後藤信之 Goto Nobuyuki ニュースセンター
腕時計などの開発・生産で培った「匠・小・省」の技術と、高い品質を活かした半導体は同社によると「ライバルの製品より多少高い価格でも買ってもらえる」のだとか。それだけに車載向けセンサーに対する期待も高い。課題は苦手とする海外市場をどう開拓するか。自動運転や先進運転支援システム(ADAS)分野では欧米勢も存在感を示しており、同市場で拡販できなければ大きな成長は望めない。 (日刊工業新聞社第一産業部・後藤信之)

編集部のおすすめ