「ギョーザ」支えるヘラが高評価、刀鍛冶が祖業の老舗が開いた活路
あの「人気国民食」を支えます―。源邑光北野刃物製作所(北野刃物、大阪府東大阪市、北野朋宏社長)が手がける、ギョーザ製造時に発生する焦げを取り除くヘラが、使い勝手の良さなどで評価されている。鉄板にこびり付く汚れをそぎ落とすステンレス製ヘラはギョーザが看板メニューで全国展開する大手中華料理チェーンで採用された。社名通り、刀鍛冶が祖業で創業1906年の老舗中小企業がユニークな事業で活路を開いている。(編集委員・林武志)
「本社を現在の場所に移転後、2016年頃に先方からお声がけ頂いた」と北野社長は振り返る。16年から中華チェーンにOEM(相手先ブランド)供給するヘラはギョーザを焼く際の鉄板の汚れを掃除するために欠かせない。注文が頻繁に入る看板商品だけにギョーザを焼く度に鉄板表面の焼きカスなどを取り除く必要がある。
現在は鉄板清掃用ヘラ以外にギョーザをすくい取るヘラやコンロ周辺の清掃道具など、大手中華チェーン向け道具は10種類程度に拡大した。現在も依頼を受けて中華鍋の清掃用道具を開発中という。
16年の納入開始以来、ギョーザの掃除ヘラの販売は累計2000本程度に上る。こうした点が評価され、大手チェーンが毎年実施しているキャンペーンの景品用の返しヘラも受注した。期間限定で配布するだけに、景品の製造は“突貫工事”的に「何とかやり切った」と北野社長は振り返る。
北野刃物の主力製品はパテを塗布するためのヘラや壁紙の継ぎ目を押さえるローラー、はけなど、内装職人が使う壁紙施工道具だ。施工道具が売上高の8割超を占めるが、最近の受注急増で中華チェーン向けは景品の“特需”もあり、「売上高全体の1割程度にまで育ってきている」と北野社長は手応えをつかむ。
現在の柱は壁紙施工道具だが、北野社長も今後の課題は「新規事業や販路開拓」と認識する。大手中華チェーン用で培ったノウハウは、鉄板を使うお好み焼きなど向けにも応用可能と見込むだけに販促策を練る最中だ。
ギョーザはカレーライスやうどん、ラーメンなどとともに日本の代表的な国民食。おかずだけでなくビールのつまみなど、店舗や自宅で幅広く楽しめるギョーザ人気は根強い。全国で直営店とフランチャイズ店を合わせて700店舗超を抱える人気チェーンの看板商品は、創業100年超で特殊刃物や肉切り包丁から壁紙施工道具へと業態変化を遂げた中小が、円滑な人気メニューの提供にひと役買っている。