「電子部品」「半導体」、商社が在庫削減に動き出した
電子部品・半導体商社が在庫削減に動き出した。コロナ禍によるサプライチェーン(供給網)の混乱で部品不足が生じ、各社は安定供給のために在庫を積み上げてきた。主要10社合計の在庫金額は9月末時点で19年度末比約2倍の水準だ。ウクライナ危機に伴うエネルギー価格高騰やインフレなど世界経済の悪化懸念が深まる中、足元ではスマートフォンやパソコンなどの出荷が減り、メモリーなどの需給が緩んでいる。適正在庫を見極めつつ、需要に応じた商材を取りそろえる目利き力が問われる。(阿部未沙子)
加賀電子は在庫水準を9月末比で200億円超圧縮し、23年3月末には500億円以下にする計画。「(在庫削減は)喫緊の経営課題の一つ」(門良一社長)。レスターホールディングス(HD)も在庫水準が上昇しており「10%前後は最低でも下げていきたい」(山口秀哉副社長執行役員)という。
日本半導体商社協会(DAFS)が9月に実施した会員(半導体・電子部品商社)を対象とした調査「DAFS景況感アンケート」によると、在庫についてのDI(「過剰」もしくは「過剰気味」から「やや不足」「不足」を引いた数値)は、6月比31ポイント増の26を記録。余剰在庫を抱える企業が増えたようだ。
大西利樹DAFS会長は「通常時は1・2から1・3カ月分ほど持つ傾向にある」と一般的な商社の在庫の持ち方を言及。「2カ月分を超えると過剰だといえる」(大西氏)と見解を示し、足元では2カ月分近く抱える商社もあると推測する。
サンワテクノスの田中裕之会長兼社長は「過去にないくらい在庫が膨れ上がっている」と危機感を示す。顧客と生産計画を調整するなど、在庫管理の精度を高める。
各社とも在庫を適正水準に抑え込もうとするが、安定供給の維持や機会損失の回避、納期を延ばしてほしいという顧客からの依頼などに対応する必要がある。コアスタッフの戸沢正紀社長は「しばらくは(在庫が)増えていく可能性が高い」と状況を分析する。
大西DAFS会長が半導体の供給状況について「まだら模様」と指摘するように、FPGA(演算回路が自由に書き換えられる)やアナログICなどいまだ不足感の強い商材もある。
加賀デバイス(東京都千代田区)は米EFINIX(カリフォルニア州)とFPGAの販売代理店契約を締結。レスターHDはFPGAを扱うパルテック(横浜市港北区)を子会社化した。丸文は米アナログ・デバイセズ(マサチューセッツ州)と販売代理店契約を結んだ。
地政学リスクによる供給網の混乱は収まっておらず、一定の在庫は必要だ。他方、余剰在庫の低減はキャッシュフロー(CF)改善につながる。各社とも財務状況を睨みながら、難しい舵取りを迫られる。
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