「仮想発電所」はスマート社会の新たなキーワードになるか
IoTで小さな発電所をまとめて運転。蓄電池、EV、節電で需給のばらつきを瞬時に解消
仮想発電所(バーチャル・パワープラント)が新しいキーワードになりつつあります。太陽光発電や風力、バイオマス発電といった各地に点在し、しかも小規模な発電設備をIoTでまとめ、1つの発電所のように機能させることを言います。他にも通信機能を持った蓄電池、電気自動車、節電も仮想発電所に入ります。うまく機能すると電力の供給量と需要量のばらつきを瞬時に解消し、再生可能エネルギーも有効活用できると期待されています。
例えば、太陽光・風力の発電が増えすぎた時、遠隔制御によって家庭やビルのエネルギー消費を増やしてあげる(例えば給湯器を動かし、タンクにお湯をためる)。この瞬間は電力が余り気味なので電力料金を安くします。
逆に太陽光・風力の発電が減った時は、蓄電池やEVから電力を送ります。この瞬間だけは蓄電池・EVからの電力を高く売れる価格にします。また、家庭・ビルを節電し、電力の需要そのものも抑えるのも仮想発電所の機能です。
エプコと福岡県みやま市は、家庭にある蓄電池を束ねて制御し、新電力(PPS)の電力需給を調整する実証事業を4月から始める。再生可能エネルギーの発電量の増減を予測して充電と放電を切り替え、電力不足を回避する。小規模な蓄電池を電力系統全体で共有して、高額な蓄電池の導入コストの低減と再生エネの活用量の増加を狙う。
実証は経済産業省の支援を受けており、エプコとみやま市は1月末までに計80台の蓄電池を市内の家庭に設置した。充電容量は合計512キロワット時。エプコが構築したシステムが充電と放電を指示する。PPSはみやま市が出資する「みやまスマートエネルギー」。4月から市内の太陽光発電から調達した電力を家庭に販売する予定。
PPSの電力需給をみながら蓄電池が電力系統と直接やりとりするのが実証のポイント。太陽光の発電が低下してPPSの電力が不足すると、放電した電力を系統に送ってPPSに供給する。通常の家庭用蓄電池は住宅の電力使用に合わせて運転し、放電した電力は家電に供給している。
PPSは電力不足が起きると電力会社から割高な電力を購入して埋め合わせる。再生エネの電力が大量に入ると需給バランスが崩れやすくなるため、蓄電池で需給を一致させる方法が各地で検討されているが、蓄電池が高コストなため普及していない。
小規模な蓄電池でも束ねて”仮想発電所“として制御できれば、蓄電池のコストを抑えられる。エプコは経済性を確認し、他のPPSにも提案する。
同社は住宅設備の設計を主力とする。電力データを解析するサービス事業にも進出し、オリックスやNEC、日本IBMと協業している。
早稲田大学スマート社会技術融合研究機構(林泰弘機構長=早大理工学術院教授)は26日、東京電力や東京ガス、トヨタ自動車、日立製作所など44社が参加し、新しい電力ビジネスを検討するフォーラムを設置したと発表した。大企業が業界の垣根を越えて連携し、IoT(モノのインターネット)によって太陽光発電や蓄電池など各地に分散するエネルギーをまとめて管理し、大規模発電所のように機能させるビジネスモデル構築を目指す。
早大が中心となって設置した「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス・フォーラム」が同日、東京都内で初会合を開いた。座長には林機構長が就任。通信系の新電力、住宅メーカーや不動産業界からも主要企業が参加した。林機構長は「フォーラムは中立的な立場から企業の意見を集約し、ビジネス化につなげていく」と役割を語った。
太陽光や蓄電池、電気自動車、燃料電池など小規模な電源設備の情報をセンサーで計測し、ICTで集中管理すると“仮想発電所”として制御できる。技術的には確立されつつあり、普及すると電力不足をすぐに解消できたり、再生可能エネルギーの導入を増やせたりできる。経済産業省も検討会を新設し、電源のまとめ役となる企業が事業展開するルールづくりに着手する。
<参加企業は次の通り>
◇電力=関西電力、九州電力、中部電力、東京電力、東北電力
◇ガス=大阪ガス、東京ガス
◇新電力=エネット、KDDI、ジュピターテレコム、ソフトバンク
◇アグリゲーター=アイ・グリッド・ソリューションズ、アズビル、エナジープールジャパン、エナノック・ジャパン、エナリス、NTTスマイルエナジー、NTTファシリティーズ、洸陽電機
◇電機=アドソル日進、NEC、エリーパワー、大崎電気工業、オムロン、京セラ、住友電気工業、ダイキン工業、東光高岳、東芝、東芝三菱電機産業システム、パナソニック、日立製作所、フォーアールエナジー、富士通、富士電機、三菱電機、明電舎
◇自動車=トヨタ自動車、日産自動車
◇住宅・建設・デベロッパー=大林組、積水化学工業、大成建設、野村不動産、三井不動産>
例えば、太陽光・風力の発電が増えすぎた時、遠隔制御によって家庭やビルのエネルギー消費を増やしてあげる(例えば給湯器を動かし、タンクにお湯をためる)。この瞬間は電力が余り気味なので電力料金を安くします。
逆に太陽光・風力の発電が減った時は、蓄電池やEVから電力を送ります。この瞬間だけは蓄電池・EVからの電力を高く売れる価格にします。また、家庭・ビルを節電し、電力の需要そのものも抑えるのも仮想発電所の機能です。
エプコなど、家庭の蓄電池を一括制御
日刊工業新聞2016年2月5日
エプコと福岡県みやま市は、家庭にある蓄電池を束ねて制御し、新電力(PPS)の電力需給を調整する実証事業を4月から始める。再生可能エネルギーの発電量の増減を予測して充電と放電を切り替え、電力不足を回避する。小規模な蓄電池を電力系統全体で共有して、高額な蓄電池の導入コストの低減と再生エネの活用量の増加を狙う。
実証は経済産業省の支援を受けており、エプコとみやま市は1月末までに計80台の蓄電池を市内の家庭に設置した。充電容量は合計512キロワット時。エプコが構築したシステムが充電と放電を指示する。PPSはみやま市が出資する「みやまスマートエネルギー」。4月から市内の太陽光発電から調達した電力を家庭に販売する予定。
PPSの電力需給をみながら蓄電池が電力系統と直接やりとりするのが実証のポイント。太陽光の発電が低下してPPSの電力が不足すると、放電した電力を系統に送ってPPSに供給する。通常の家庭用蓄電池は住宅の電力使用に合わせて運転し、放電した電力は家電に供給している。
PPSは電力不足が起きると電力会社から割高な電力を購入して埋め合わせる。再生エネの電力が大量に入ると需給バランスが崩れやすくなるため、蓄電池で需給を一致させる方法が各地で検討されているが、蓄電池が高コストなため普及していない。
小規模な蓄電池でも束ねて”仮想発電所“として制御できれば、蓄電池のコストを抑えられる。エプコは経済性を確認し、他のPPSにも提案する。
同社は住宅設備の設計を主力とする。電力データを解析するサービス事業にも進出し、オリックスやNEC、日本IBMと協業している。
電力の新ビジネス探る。早大のフォーラムに44社参加
日刊工業新聞2016年1月27日付
早稲田大学スマート社会技術融合研究機構(林泰弘機構長=早大理工学術院教授)は26日、東京電力や東京ガス、トヨタ自動車、日立製作所など44社が参加し、新しい電力ビジネスを検討するフォーラムを設置したと発表した。大企業が業界の垣根を越えて連携し、IoT(モノのインターネット)によって太陽光発電や蓄電池など各地に分散するエネルギーをまとめて管理し、大規模発電所のように機能させるビジネスモデル構築を目指す。
早大が中心となって設置した「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス・フォーラム」が同日、東京都内で初会合を開いた。座長には林機構長が就任。通信系の新電力、住宅メーカーや不動産業界からも主要企業が参加した。林機構長は「フォーラムは中立的な立場から企業の意見を集約し、ビジネス化につなげていく」と役割を語った。
太陽光や蓄電池、電気自動車、燃料電池など小規模な電源設備の情報をセンサーで計測し、ICTで集中管理すると“仮想発電所”として制御できる。技術的には確立されつつあり、普及すると電力不足をすぐに解消できたり、再生可能エネルギーの導入を増やせたりできる。経済産業省も検討会を新設し、電源のまとめ役となる企業が事業展開するルールづくりに着手する。
◇電力=関西電力、九州電力、中部電力、東京電力、東北電力
◇ガス=大阪ガス、東京ガス
◇新電力=エネット、KDDI、ジュピターテレコム、ソフトバンク
◇アグリゲーター=アイ・グリッド・ソリューションズ、アズビル、エナジープールジャパン、エナノック・ジャパン、エナリス、NTTスマイルエナジー、NTTファシリティーズ、洸陽電機
◇電機=アドソル日進、NEC、エリーパワー、大崎電気工業、オムロン、京セラ、住友電気工業、ダイキン工業、東光高岳、東芝、東芝三菱電機産業システム、パナソニック、日立製作所、フォーアールエナジー、富士通、富士電機、三菱電機、明電舎
◇自動車=トヨタ自動車、日産自動車
◇住宅・建設・デベロッパー=大林組、積水化学工業、大成建設、野村不動産、三井不動産>