自己免疫疾患患者はコロナワクチン抗体価減、阪大の解析が示唆したこと
大阪大学の山口勇太大学院生と行木紳一郎大学院生、加藤保宏助教、熊ノ郷淳教授らは、関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)など自己免疫疾患患者において新型コロナウイルスに対するメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン接種後の免疫動態を解析し、特定の免疫抑制治療でウイルスへの中和抗体価が減弱しやすいことを発見した。患者の特徴に応じたワクチンの投与方針の検討材料になることが期待される。
自己免疫疾患患者が使用する免疫治療は、ワクチンによる免疫反応を減弱させる懸念がかねてあった。そこで研究チームは阪大病院に通院中の患者の血液サンプルを収集し、ワクチン接種前後の新型コロナウイルスに対する中和抗体価の変化などを調べた結果、ステロイドやアバタセプトを使用しているRA患者は中和抗体価のピークが低く、TNF(腫瘍崩壊因子)―α阻害薬を使用するRA患者は長期で見ると中和抗体価が下がりやすい傾向にあることが分かった。こうした治療を行っている患者は、他者に比べてワクチン接種を前倒しすることが望ましいことも示唆された。
成果は米科学誌ランセット・リージョナル・ヘルス・ウェスタンパシフィック電子版に掲載された。
日刊工業新聞 2022年12月22日