三菱ケミカルGが機能性素材の値付け変革へ、「変動価格制」は広がるか
三菱ケミカルグループは機能性素材(機能商品)の値付け変革に着手した。新素材により顧客製品の性能などが大きく上がる場合、顧客の得る便益の大きさで素材価格を決める「ダイナミック・プライシング」を導入する。また、各顧客への供給までのコストの違いや変動を把握し、価格交渉などに生かす。価値の高い素材を増やし、競争力を高める。
三菱ケミカルグループは価格設定に関して二つの変革を行う。新素材へのダイナミック・プライシングの導入と、価格の基盤となるコスト変動などの詳細な把握だ。
まず、顧客製品の価値を大きく向上させる新素材には、ダイナミック・プライシングを導入する。従来は既存素材の価格やコストが基準だった。一部素材で導入し、順次対象を拡大する。これは顧客が新素材の価値を認めなければ広がらない。値付けを通じ、価値の高い素材の開発を後押しする狙いもある。機能商品関連の「一大プロジェクト」(瀧本丈平執行役エグゼクティブバイスプレジデント〈アドバンストソリューションズ所管〉)と位置付ける。
また、価格設定や交渉の基盤として、2025年度をめどに各顧客への素材供給までのコストや収益性を適時把握する仕組みを構築する。物流手段や経由する販売店、倉庫などの違いを反映。デジタル技術により供給網管理を高度化し、実現する。コスト変動に伴う利益減少を防ぐ。
類似した高度な供給網管理は、アクリル樹脂原料(MMA)で先行している。
最終製品の機能向上に寄与する機能性素材は、常に性能を上げなければグローバル競争に勝てない。研究開発のための適正な利益確保は素材業界に共通する課題だ。同社によると、他社も一部ダイナミック・プライシングを始めているという。国内化学最大手が本腰を入れることで、広がるかが注目される。
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日刊工業新聞 2022年12月19日