脱炭素に励む中小企業たち、語り始めたメリットと苦労
中小企業が結集し、再生可能エネルギーの導入拡大に向けて活動する団体「再エネ100宣言REAction(アールイーアクション)」が設立3周年を迎えた。大学や自治体を含めた参加は約300社・団体に迫り、45社・団体が事業で使う電気全量を再生エネ化した。活動を始めて3年が経過し、脱炭素に向けて行動する企業がメリットや苦労、課題などの体験談を語り始めた。
アールイーアクションは12月2日、2019年の設立後、会員が集まるイベントを初めて開催した。都内の会場には中小企業の経営者が登壇し、自社の取り組みを発表した。
廃棄物処理業の宮城衛生環境公社(仙台市青葉区)は19年、宮城県内で初めてアールイーアクションに加盟し、再生エネ100%を目指すと宣言した。砂金英輝社長は「今のままで会社が大丈夫なのか不安だった。地域で信頼される会社になりたいと思い、脱炭素を宣言した」と語った。
事業で排出する二酸化炭素(CO2)をゼロにする脱炭素は目標として分かりやすく“信頼の証し”となる。だが、方法が分からず県主催のセミナーに参加し、アンケートに質問を書くなどして情報を収集した。
アールイーアクションを知って入会すると講師や取材の依頼が増えた。知名度が向上して「社員の意識が変わった」と喜ぶ。社員自ら環境を基準に事務用品を選んで購入するなど、宣言の効果は絶大だった。
川崎信用金庫(川崎市川崎区)は事業所への太陽光パネルの設置を推進する。現在の再生エネ比率は36%と推定しており、「30年度15%」の中間目標を上回るペースだ。費用が気になるが、早期の投資回収を見込んでおり「コスト倒れにならない」(山本浩之総合企画部副部長)と言う。
足元では電力会社から購入する再生エネ電気の価格が上昇している。山中製菓(岐阜市)の中西謙司社長は「電気代が倍近くになったが、CO2排出量を減らすには有効」と再生エネ電気の購入を継続中だ。一方で、工場への太陽光パネルの導入を決めた。購入量を減らして価格変動の影響を和らげるためだ。
その太陽光発電設備は半導体不足で納期が長期化している。太陽光パネル搭載住宅メーカーを販売する新昭和(千葉県君津市)の鈴木達也取締役は「導入すると決めたら早く調達した方がいい」と助言した。
他団体とも意見交換した。気候変動対策に積極的な225社のグループ、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)の三宅香共同代表(三井住友信託銀行主管)は「1社で言いにくくても、みんな集まると言えるようになる。メンバー全員の力を使うことが重要」とエールを送った。
JCLPは再生エネの調達環境の改善を政府に訴え、制度変更を実現した経験がある。発表を聴講した大島理森前衆議院議長(JCLP特別顧問)は「それぞれの企業にポリシーがある。社員にも誇りが生まれており、感動した」と感想を語った。
アールイーアクションは19年10月、中小企業や大学など28社・団体が集まって発足した。50年までに再生エネ100%を達成すると宣言し、実績を毎年公開することが参加条件。加盟すると成功事例の共有や情報発信の強化が期待できる。現在292社・団体が参加する。
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