外航海運の業績に大打撃、個人消費鈍りコンテナ荷動き減速
2022年のコンテナ貨物の荷動きの伸び率は大幅に減りそうだ。日本郵船がまとめた世界のコンテナ輸送と就航状況によると、22年の荷動き量は前年比1・3%増の2億4000万TEU(1TEUは20フィートコンテナ1個)を見込んでおり、21年の伸び率より5・1ポイント減少する。コロナ禍がもたらした物流網の混乱は徐々に収束しつつあり、外航海運の業績にも影響を与えそうだ。
コンテナ貨物の荷動きは08年のリーマン・ショック後、各国の生産拠点の中国シフトもあって右肩上がりに伸びていた。20年はコロナ禍に伴う北米主要港におけるコンテナ船の滞船など物流網の混乱の影響で、同2・2%減の2億2200万TEUと減少したが、21年は各国の財政出動による「巣ごもり需要」もあって、同6・4%増の2億3700万TEUと大幅に伸びた。
22年に入ると主要航路であるアジア発北米向けの航路では5月に過去最高となる約200万TEUを記録した。日本郵船の原源太郎調査グループ長代理は、北米港湾の労使交渉に伴う混乱をあらかじめ避けようと、クリスマス商戦向け貨物の「前倒し出荷が背景にある」と分析する。
ただ、9月以降に荷動きは急減。10月には前年同月比8・9%減の162万5000TEUまで落ち込んだ。大手小売りなどで物流インフラの処理能力を超える「過剰在庫の問題が顕在化してきてオーダーが減った」(原調査グループ長代理)ことも影響を与えたようだ。
アジア発北米向けコンテナ貨物の荷動き(1―9月)を品目別に見ると、新築住宅着工件数の減少などで「家具・家財道具」が減少しているほか、巣ごもり需要の一巡で「電気機器」の需要も減っている。世界的なインフレに伴う物価高の影響で個人消費も減速している。今後の22年のコンテナ貨物の荷動きは「おそらく横ばいか、下の方に向かっていく」(原調査グループ長代理)見通しだ。
一方、アジア発欧州向けを見ると、2月のロシアによるウクライナ侵攻を機に荷動きは前年を割り込み続けている。さらに物価高や個人消費の減速などを受け、9月に荷動きは急減しており、1―9月累計で前年同期比6・2%減の1184万5000TEUとなった。
23年の世界経済は厳しい景気減速が予想される中、個人消費の一層の落ち込みが懸念される。ポストコロナのコンテナ貨物の荷動きもそれと呼応して下落する恐れがある。
外航海運各社はコロナ禍による物流網の混乱とその後の巣ごもり需要の増大によるコンテナ船の運賃市況の高騰の結果、歴史的な好業績を上げてきた。23年の荷動きもこのまま減速が続けば業績への影響は避けられない。