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燕三条の板金加工メーカーは、いかにして自社ブランド「CANGAL」を作ったか!?

一般消費者が使える物、プロが一目でわかる高い技術力を見える化
 中小企業の中でも小規模経営の製造業は下請けの部品メーカーが多く、最終商品の企画・マーケティングが苦手な企業が大部分を占める。しかも取引先との契約のため、どの製品や機械に使用されている部品なのか公表できない場合も多い。業務用の組み込み製品(部品・モジュール・デバイス等)の場合は、部品を製造する技術を別の形で「見える化」して商品開発することが有効だ。一般顧客は、すごい技術が何に使われているか全くわからないからである。

 訴求ポイントは次の2点。(1)一般消費者が使える物であること(2)プロが一目でわかる高い技術力を見える化すること。実施する手順は以下の通り。(1)技術資産の強みを抽出する(2)強みをベネフィットに変換する(3)試作とテストマーケティングを繰り返す(4)ターゲット顧客を1点に絞り込む。

 新潟県燕三条の精密板金加工メーカー、石田製作所では、自社ブランド確立のために技術資産を棚卸しし、同社の強みである「精密加工技術」の曲げ、溶接、磨きが一目でわかる缶オープナーを試作。カーレース会場でテストマーケティングを開始し、レースクイーンや女性たちの不満や悩み、隠れたニーズの発掘収集を繰り返した。その結果、ターゲット顧客を、ネイルを施しているため、缶を開けづらい女性に絞り込んだ。

 コンセプトは(1)同社の全技術の見せる化(2)利便性が高い(3)かわいい感性の3点。女性がワクワクするシンデレラの靴として、四つの金属パーツを37工程かけて精密加工した、ハイヒール型プルタブオープナーが誕生した。他方、業務用のプロが見れば、一目瞭然の金属精密加工の『技術の見える化』で本来の業務用の需要の増加につながり、全売り上げの十数%を、開発段階からの新規ビジネス受注が占めるまでに成長した。

 缶と女性を掛け合わせた「CANGAL」という商標名も取得。数多く存在する精密板金メーカーの中で、「CANGAL」といえば石田製作所のブランディングに成功した。日本感性工学会が主宰する『かわいい感性デザイン賞』の2013年度最優秀賞も受賞し、企業価値に拍車をかけている。
(筆者=ダヴィンチ・ブレインズ・下川眞季社長)
日刊工業新聞2015年04月16日 モノづくり面
加藤百合子
加藤百合子 Kato Yuriko エムスクエア・ラボ 代表
下川さんが書かれている通り、中小のものづくり企業は親企業との機密保持の関係もあり、なかなかその技術の高さを見せることができていません。見せられないと、他の企業からの注文が取りにくいというのもさることながら、雇用が難しいという問題に直面しています。私の地元静岡は輸送機器の下請け企業がたくさんありますが、親企業の海外移転に伴い受注が減る中、自社ブランドを立ち上げられるかどうかに事業継続の可否がかかっていると現場にいて痛感しています。

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