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土壌汚染対策法20年、残されたままの課題

土壌汚染対策法20年、残されたままの課題

土壌汚染は珍しくなくなった(イメージ)

土壌汚染対策法が2003年2月の施行から間もなく20年を迎える。施行前の1990年代まで工場で土壌汚染が発覚すると社会問題となっていた。今では土壌汚染が珍しくなくなり、ニュースになることも少なくなった。一方、必要以上の対策や中小企業支援などが課題として残ったままだ。

土壌汚染対策法(土対法)は、3000平方メートル以上の土地の形状を変える前、都道府県知事への届け出を義務付けている。有害物質を使う施設がある土地は900平方メートル以上の変更が対象だ。知事が土壌汚染の恐れがあると認めると、調査と報告が必要となる。

調査件数は増加傾向にあり、11―17年まで年700―800件だった報告数は、20年度に1342件まで増えた。18年から19年にかけての法改正で届け出前の事前調査が認められたためだ。

また最近では自主調査が増え、申請の3割を占めている。長年、汚染問題を取材する大岡健三氏(月刊誌『環境管理』前編集長)は「早く土地を売って資金を得たい土地所有者が自主調査を選択している」と分析する。自主調査で汚染が発見されても、土地の形状を変える区域に申請できる。都市部ほど土地は買い手が付くため、知事の判断を待たずに調査しているようだ。

自主調査が増えた背景に土壌汚染が珍しくなくなったこともある。11月中旬に開かれた土対法制定20年周年イベントに登壇した横浜国立大学大学院の小林剛准教授によると「調査すると半数で汚染が見つかる」という状況だ。調査業務を請け負う国際航業(東京都新宿区)の中島誠フェローも「風評被害がなくなり、堂々と調査ができるようになった」と施行20年での変化を語る。

社会が過剰に反応しなくなった反面、残された課題もある。土対法は健康被害の恐れがなければ、汚染の除去まで求めてない。汚染が地中にとどまっている限り、人への影響は少ないと考えられるためだ。健康被害の恐れがある場合は除去が必要となるが、汚染土壌を運び出す掘削除去の採用が多い。掘削除去は多額の費用が発生するほか、振動や運搬での環境負荷や作業者の健康被害が懸念される。専門家は汚染物質を地上に吸引する方法や微生物による分解など、ほかの手法の採用も呼びかけている。

中小企業対策も課題だ。土対法は有害物質を使っていた事業所を廃止する場合に調査を義務付けているが、廃業時に初めて知っても調査や汚染対策の費用がない中小企業も少なくない。そこで神奈川県秦野市は全事業所に調査を義務付けた代わりに簡易調査法を用意。さらに市が浄化装置を貸し出して負担を軽減している。

また大岡氏は「土対法よりも土地取引で問題が起きる」と指摘する。土地を売った土地所有者が、購入者から汚染の除去費用を請求される裁判が後を絶たないためだ。汚染を隠して売ると悪質だが、土地所有者も汚染を知らなかった場合もある。

さらに、汚染が見つからなかった土地でも、今後の分析機の進歩や規制物質の追加で汚染土壌となる可能性もある。大岡氏は「土壌汚染に関心が薄れたようだが、最新情報の確認が必要だ」と助言する。

日刊工業新聞 2022年12月09日

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