三井不動産の新社長、植田取締役専務執行役員ってどんな人?
三井不動産は、2023年4月1日付で、植田俊取締役専務執行役員(61)が社長に昇格する人事を内定した。11年以来約12年間にわたって経営を指揮してきた菰田正信社長(68)は、代表権のある会長に就く。コロナ禍の影響が一段落し「25年までの中期経営計画の達成に道筋が付いた」(菰田氏)と判断。時間の経過とともに価値を磨く“経年優化”の街づくりを進めながら、土地を軸に空間や環境まで提案するようなビジネスを加速していく。
次期社長に就く植田氏は支店や関連会社といった現場を中心に、主力のオフィスビル事業で持つ豊富な経験が持ち味だ。植田氏自身がライフワークと表現する、ライフサイエンス領域やスタートアップとの協業といった同社の戦略分野で培ってきた知見も強みだ。東京・日本橋を拠点とするライフサイエンスの交流基盤「LINK―J」や、公民学連携で手がける千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」など、日本橋と並ぶ同社の“代名詞”にも携わってきた。
9日都内で会見した植田氏はバトンを受け継ぐにあたり「当社は街づくりという手段を通し、産業競争力を強くするプラットフォーマーだと考えている。『妄想・構想・実現』という言葉を大切に、この3段階で事業の発展に挑んでいきたい」と意気込みを示した。菰田氏は植田氏について「中期経営計画の進行や達成に貢献してきた立役者で私の右腕。人物・見識・能力ともに、グループの新時代を切り開いてくれるものと確信している」と太鼓判を押した。
菰田氏は社長に就任して以来「モノだけでなく、サービスも届ける企業」を志向。理想の働き方や新たな産業を生むだけでなく、訪れたくなる工夫や豊かに暮らす提案を重視してきた。その基盤となる「多彩な機能を複合したミクストユースの街づくり」(菰田氏)の結果、日本橋を中心ににぎわいの創出や企業の多様化などの効果が生まれている。日本の不動産会社の海外投資としては過去最大の約5500億円を投じた米ニューヨークの複合開発も決断した。
素顔/妄想・構想・実現でまい進
主力のビルディング事業が長く「保守本流と見られるが、実は違う」。約40年の会社員人生で、本社勤務は十数年だけ。関連会社ではバブル崩壊後の不良債権処理や不動産証券化ビジネスの立ち上げも担当し「なかなか経験できない濃厚な時間を過ごした」と笑う。
菰田氏は「私の右腕として、中期経営計画の進捗(しんちょく)や達成に貢献した立役者」と評価。その上で「グループの新時代を切り開いてくれると確信している」と太鼓判を押す。粘り強さや高い実行力も、社内で折り紙付きだ。
「妄想でも大義があれば仲間が集まって構想となり、やがて実現する」がモットー。自社の本質を「街づくりを通して産業競争力を強くするプラットフォーマー」と明言。江戸時代から薬種問屋が並び、今も製薬企業が集まる東京・日本橋に構築した「スタートアップを含むライフサイエンスのエコシステム」が“代表作”だ。(堀田創平)
【略歴】植田俊氏(うえだ・たかし)83年(昭58)一橋大経卒、同年三井不動産入社。11年執行役員、15年常務執行役員、20年取締役常務執行役員、21年取締役専務執行役員。京都府出身。