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理工系強化を重点項目に決めた私大連、会長が強調したこと

日本私立大学連盟(私大連)は政府が私立大学に期待する理工系強化を、私大連における議論の重点項目とすることを決めた。デジタルや環境など成長分野の人材育成は、産業社会からのニーズも高い。私大連は東京23区の学部定員抑制の見直しを、政府に強く求めることと合わせて議論していく。

私大連は「理工系分野の教育研究推進プロジェクト」を設置している。こういった枠組みを活用し、理系学部を持つ大学を中心に検討する。一方、加盟大学では東京23区規制の影響を受ける例が多い。この法律の見直し時期を迎えるため、規制撤廃を政府に要望している。そのため政府が既存学部の再編で理系シフトを求めるのに対し、私大は定員増で理系強化を図りたい構図になっている。

記者懇談会で田中愛治会長(早稲田大学総長)は「デジタル化をはじめ私大の役割が期待されながら、23区規制があるのはおかしい」と強調した。他にも「デジタル人材育成は人文社会科学との連携で考えるもの」(曄道(てるみち)佳明上智大学学長)、「再編ではなく、純増でないと対応できない」(西原廉太立教大学総長)などの意見が出た。また家政学から工学系への再編を進める日本女子大学の篠原聡子学長は「新学科設置などに向けて、定員管理の規制も再検討を」と言及した。

日刊工業新聞 2022年11月24日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
文科省の今年度二次補正予算の大きな目玉は、デジタル・グリーンなど成長分野への学部転換などの改革を後押しする基金、約3000億円の創設だ。国の理系強化の方針に対し、私大連の会見時(11.8)には東京23区の学部定員増をセットに求める声が強かったが、こうなると基金による支援の方がぐっと魅力的なのではないか。文科省幹部によると、基金の規模が大きいため比較的、支援獲得のハードルは低いという。国公私立問わず、理系素養強化のための学部・学科再編で、大きな波が起きてくるかもしれない。

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