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廃棄年1兆キロワット時「未利用熱」を生かす蓄熱システムの可能性

東邦ガスが開発
廃棄年1兆キロワット時「未利用熱」を生かす蓄熱システムの可能性

東邦ガスが開発した蓄熱材(右)を温水タンク(左)に投入することで蓄熱システムとして運用できる

東邦ガスはコージェネレーション(熱電併給)システムや蒸気ボイラで生み出した熱のうち、捨てざるを得なかった100度C未満の低温の未利用熱を活用できる蓄熱材を開発した。市場流通量の多い食品添加物のミョウバンを主成分とするため、安価に作れる。蓄熱システムに応用し、早ければ2024年から提案する。部品洗浄向けの給湯や空調設備を省エネルギー化する利点を訴求し、工場や商業施設に売り込む。国内で年間1兆キロワット時が廃棄されているという熱を新たなエネルギー源に活用できそうだ。

東邦ガスが開発した蓄熱材はミョウバンを主体に約100通りの添加物を配合して製造することで、蓄熱温度を40―110度Cに自在に調整できる。固体から液体に変化する時に熱を蓄え、固体に戻る時に放熱する仕組みのため繰り返し使える。熱電併給システム排温水に合わせた90度C仕様では、1リットル当たり450キロジュール蓄熱できる。市場に流通するパラフィン主体の蓄熱材と比べると、体積当たりの蓄熱量は2―3倍に上昇することを確認した。

今後、未利用熱を使った蓄熱システムが夏場や冬場を含めた年間を通して有効に使えるか検証を進める。現在は、包装した蓄熱材を温水タンクに入れるだけで運用できる仕組みにしており、1日程度保温した上で生産設備への給湯や空調に使える。5立方メートルのタンクに800キログラムの蓄熱材を充填すれば、蒸気ボイラの場合で都市ガス削減量は年間5600立方メートル、二酸化炭素(CO2)削減量は年13トンとなる試算だ。湯を使った生産部品の洗浄工程を持つ企業などと「生産現場での実証にも取り組みたい」(開発担当者)としている。

また、温度を自在に調整できる強みを生かし、BツーC(対消費者)向けにアウトドアや防災用の防寒マットとして22年10月から同社の電子商取引(EC)サイトで発売している。21年12月に実施したクラウドファンディング(CF)による試験販売では約109万円を売り上げた。

日刊工業新聞 2022年12月07日

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