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歴史的な好業績、海運業界がコロナ禍で受けた恩恵とこれからの懸念

歴史的な好業績、海運業界がコロナ禍で受けた恩恵とこれからの懸念

海運大手3社が共同出資するONEのコンテナ船

コロナ禍に伴う世界経済への影響は日本企業の業績の明暗を分けたが、外航海運は最も恩恵を受けた業種の一つだ。物流網の混乱とその後の「巣ごもり需要」の増大でコンテナ船の運賃市況が高騰し、日本郵船商船三井川崎汽船の3社の2023年3月期連結業績予想は2期連続で利益が過去最高を更新する見込み。しかし、足元では運賃市況の悪化が進んでおり、どのレベルで下げ止まるのか予測の難しい状況が続く。

3社は、共同出資して設立した持ち分法適用のコンテナ船事業会社「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)」の好業績を受け、上方修正を繰り返す。8、9月にかけてコンテナ船の運賃市況は悪化に転じたが、上期(4-9月期)の業績と足元の円安効果もあり、日本郵船が2期連続で連結当期利益1兆円を見込むなど、通年では好業績を維持する見込みだ。

ただ、世界的なインフレの進行による景気減速懸念やそれに伴う輸送需要の減少などを受け、需給バランスの調整は依然として継続しており、下期(10―23年3月)の利益は上期より大幅に減少する見通しだ。商船三井の橋本剛社長は今後の市況について「極端に悲観的な見方はしていない」というものの、「どの程度に見るかは関係者の間では議論が分かれる」と述べる。

08年のリーマン・ショック後は荷動きの減少と船舶の供給過剰で「海運不況」の時代が長く続き、赤字でのコンテナ船運航を余儀なくされた。だが、日本郵船の長沢仁志社長は、世界のコンテナ船事業がONEを含む大手に集約されたため、「前のように価格のたたき合いが起きて赤字運航にはならない」と指摘する。

一方で3社は安定的な収益が見込める液化天然ガス(LNG)事業や不動産、物流などの非海運事業に力を入れるなど、ボラティリティー(変動性)の高さを修正しようとしている。歴史的な好業績からどの水準で軟着陸するのか。23年3月期が注目される。

日刊工業新聞 2021年12月6日

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