過去最大の赤字幅さらに拡大…中国電力にのしかかるカルテル疑いの重い“ツケ”
燃料高騰や円安で電力会社の経営が非常に苦しい中、中国電力、中部電力、九州電力の3社には法人向け電力供給のカルテルの疑いで課せられた独占禁止法違反(不当な取引制限)の課徴金が重くのしかかる。特に中国電力は2022年10―12月期に707億円を特別損失に計上、23年3月期の連結当期損益を従来予想の1390億円の赤字から2097億円の赤字(前期は397億円の赤字)に修正した。過去最大の赤字幅がさらに拡大する。
3社は事業者向けの特別高圧、高圧の電力販売で、電力自由化前の他社の営業エリアで積極的な営業行為をしないことで関西電力と合意したとされる。関西電力の役員から各社に呼びかけたとされるが、同社は最初に違反を申告したため課徴金減免(リーニエンシー)制度で課徴金を免れる見通しだ。
中国電力は料金改定に国の認可が必要な規制料金について、23年4月からの値上げを11月25日に申請したばかり。約110万件が対象で平均の値上げ幅は31・33%、標準家庭で1カ月の支払い額が2399円増える。瀧本夏彦社長はその際の会見で「燃料高騰の影響が大きく、単独で抱え込むのは難しい。料金引き上げは心苦しい限り」と述べている。
国は「値上げ申請の審査に影響は与えない」(松野博一官房長官)との姿勢だが、少なくともこのタイミングでのカルテル発覚に顧客の理解を得るのは難しくなる。電力自由化で新電力などとの競争が激化する中、市場支配力のある大手電力同士が手を結んだ行為は、財務体質の毀損(きそん)と信頼失墜という重いツケになった。西村康稔経産相は「電力自由化の趣旨に反する極めて残念なこと。適切に対応する」と今後の行政所分を示唆した。
中部電力も275億円強を22年10―12月期に特損計上する。九州電力の課徴金は約27億円。課徴金を免れる関西電力も、企業として最も大切な信頼を失うことになる。