「いつまで作り続けるのか」の声も…トヨタが5代目発表、HV「プリウス」の存在価値
トヨタ自動車がエコカーの代名詞であるハイブリッド車(HV)「プリウス」の5代目モデルを発表した。初代の発売から25年が経過し、HVは当たり前のものとなった一方で、最近ではエコカーとして電気自動車(EV)が存在感を高め、世界各国ではHV外しの規制も目立ってきた。ラテン語で「先駆け」を意味するその名の通り、新たな存在価値を切り開いていけるか注目される。
EV台頭も手の届くエコカー追求
「カーボンニュートラル時代には皆の手に届くエコカーが必要だ」。16日の会見でクルマ開発センターデザイン領域のサイモン・ハンフリーズ統括部長は断言した。EVが脱炭素化の“スタンダード”として台頭しつつあるが、価格の高さから誰もが買える車にはなっていない。「環境技術は普及してこそ」とのポリシーを持つトヨタ。新型プリウスの開発責任者である大矢賢樹主査は「幅広い顧客に選んでもらうことが、プリウスの役目だ」と言い切る。
同日披露した新型プリウスは、全高を40ミリメートル下げ大径タイヤを取り入れデザインを一新。第5世代ハイブリッドシステムを採用し出力を約1・6倍に高めるなど、走る楽しさも取り入れた。燃費性能といった数字だけでなく「愛される車にした」(ハンフリーズ統括部長)という。燃費は4代目並み。車台はトヨタの共通設計思想「TNGA」第2世代にあたるカローラ級の「Cプラットフォーム」を採用する。
HVに加えてプラグインハイブリッド車(PHV)も設定する。最高出力は164キロワットで、時速100キロメートルまでの加速時間は6・7秒だ。従来型に比べEV走行距離を50%以上高める。HVモデルは今冬、PHVモデルは2023年春頃の発売を予定しており、燃費や車載電池容量などの詳細は別途公表する。
「いつまでHVを作り続けるのか、という声も大きくなっている」とハンフリーズ統括部長が自問自答するように、世界では電動車とはいえ内燃機関を搭載するHVを排除する方向が強まっている。会見では開発にあたり豊田章男社長から「究極の環境普及車として、タクシー専用車にして車台やシステムを外販すればいいのでは」との提案されたことも明かした。
しかし「プリウスは絶対になくしてはいけないブランドだ」(ハンフリーズ統括部長)。EV、燃料電池車(FCV)の普及まで時間がかかると見られる中で、環境に貢献するHVの役割はまだある。それを示すことが、HVをリードしてきたプリウスの今後の存在価値だ。
本文続きはこちら:プリウス初代からの歴史とこれからのHV市場
【関連記事】 トヨタの世界戦略を支える強力な「日独連合企業」