「H形鋼」「鉄筋」「生コン」…資材価格高騰が圧迫するゼネコン大手の利益
ゼネコン大手4社は2023年3月期連結業績予想で軒並み増収を予測する。足元で都市部の再開発プロジェクトや大型の土木工事など手持ち案件の消化が進む。併せて生産拠点や研究開発拠点など民間の建築工事も活発なのが主な要因。利益面では3社が営業増益を見込むものの、建設資材の価格高騰が懸念材料となる。価格転嫁の交渉は道半ばで、長引くことも多い。設備機器の納入遅れに伴う工期の長期化も見られる中、各社は採算重視の姿勢を強めている。
H形鋼や鉄筋、生コンといった資材価格の高騰が、各社の利益を圧迫し始めている。建設工事の採算性を示す完成工事総利益率(単体)を見ると、鹿島と大成建設は土木・建築とも悪化。それぞれ前期比1・7ポイント減の10・0%、同1・6ポイント減の9・7%を見込む。大林組は改善を見込んだ建築が期初予想を割り込み、同3・3ポイント増も9・2%の見通し。清水建設も同1・4ポイント増となるが、6・6%と3社より低い水準を予測する。
建設業界では資材価格の高騰を受け、土木・建築工事の発注者に対し契約価格や工期への適正な反映を要望している。一方で民間企業が発注者となることが多い建築工事では、そもそも資材価格を反映させるスライド条項のない案件が多い。このため転嫁交渉は長期化する傾向にあり、大手幹部は「新規契約はまだ交渉の余地もあるが、すでに着工したものについては非常に難しい」とする。
大林組の小寺康雄副社長は「H形鋼や鉄筋は4月以降の価格上昇が大きく、これを吸収できずにいる」と明かす。各社は前期までの受注工事に加え、着工直後や新規工事の転嫁交渉にも着手。濃淡はあるものの、負担を受け入れる発注者も増えてきたようだ。高止まりする資材価格を踏まえ「この先の採算性は想定通りに推移しそうだ」(鹿島の内田顕取締役専務執行役員)との見方も出ている。
こうした中、ゼネコン側でも21年のような激しい受注競争は収束してきたという。大成建設の桜井滋之副社長は「各社とも無理はせず、受注時採算に重きを置いている印象」と話す。もう一つ、各社が慎重な受注に転じた遠因に建設現場が直面する人手不足がある。「技能労働者だけでなく、ゼネコンの技術者も足りていない。施工能力を考える状況にある」(桜井副社長)と危機感を示す。
併せて、建設業界には24年4月に「働き方改革関連法」による時間外労働の上限規制適用も迫る。各社は現場の働き方改革や生産性向上に取り組んでいるものの、ハードルは高いのが実情だ。工程への影響が大きいためこちらも発注者との調整が欠かせないが、特に民間の建築工事となると難航する例が多い。建設業界にとって、しばらくは利益面で“逆風”の環境が続く。