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蓄電池の高エネ密度化に道、東大などがリチウム金属の劣化抑制手法開発

蓄電池の高エネ密度化に道、東大などがリチウム金属の劣化抑制手法開発

リチウム金属の析出・溶解反応のイメージ(東京大提供)

東京大学のコ・ソンジェ助教、山田淳夫教授らは名古屋工業大学と共同で、リチウムイオン電池(LiB)において、リチウム金属の劣化を抑制する手法を開発した。リチウム金属の反応活性を弱める電解液を設計することで、劣化を抑えながらリチウムイオンとリチウム金属間の溶解析出反応を安定させられる。リチウム金属の反応活性に対する影響度を機械学習によって評価した。負極材料にリチウム金属を用いた、高エネルギー密度の蓄電池の実用化につながる。

リチウム金属の反応活性そのものを弱める電解液の探索により安定動作を実現した。まず、74種類の電解液に対し、分子動力学計算などから特徴を抽出。各特徴の反応活性への影響度を機械学習を用いて評価した。

その結果、電解液中にリチウムイオンが高密度に存在すること、リチウムとアニオンが近接する構造をとること、これらを満たすクラスター領域が存在することの3点が重要と分かった。

これらを満たす複数の新規電解液では、充電電気量に対し取り出し可能な放電電気量の割合を示すクーロン効率が実用レベルに近い99%を示した。

現在、負極材料には一般に炭素材料が使われているが、これを電気を効率的に蓄えられるリチウム金属に置き換えられれば大幅にエネルギー密度を高められる。

しかし、リチウム金属は反応活性が高いため、電解液との間で容易に副反応が起こり、イオンと金属の状態間の溶解析出反応を十分に可逆的に起こせない。

保護被膜形成により副反応を抑える電解液や添加剤が開発されてきたが、実用化できるだけの効果は得られていない。

日刊工業新聞 2022年11月10日

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