海洋資源で量産する「リチウムイオン電池セル」の貢献
アイ・エレクトロライトが技術確立へ
アイ・エレクトロライト(大阪府吹田市、阿部一雄社長)は、2025年をめどに海洋資源を活用したリチウムイオン電池(LiB)セルの量産に乗り出す。アルギン酸やエチルセルロース、キトサンといった海藻類などに含まれる高分子を正極製造時のバインダー(接着剤)、分散剤や電池セパレーターに用いる。使用後の電池材料を水処理で分離抽出でき、電池に使うレアアース(希土類)金属のリサイクルがしやすくなる。25年までに量産技術を確立し、電池メーカーとも協力しながら量産する。
アルギン酸などは多糖類で、コンブやワカメの表面のぬめりの成分。海藻類は日本人以外はあまり食べず、廃棄処分が多いという。資源として確保しやすく、有効活用にもなる。
海洋高分子はバインダーと分散剤のそれぞれの機能を持つもの、両機能を併せ持つものがあるという。性能もさまざまあり、電池として求められる性能に合わせて使い分ける。
従来、電極製造の乾燥工程で窒素を含む有機化合物を溶剤として用いる。天然物の海洋高分子のバインダー、分散剤を用いることで溶剤が不要となり環境負荷低減に寄与する。
また、セパレーターはポリエチレンやナイロンなどの樹脂フィルムが用いられており、リサイクルが難しい。アイ・エレクトロライトはアルギン酸を用いた不織布を電池に使えるようにし、リサイクル可能にした。
現在はプロトタイプのセルで安全性や耐久性などを試験している。従来のセル量産機への適用や実際に電池で使用しての機能の検証など、電池のメーカーやユーザーと共同で実用化技術を確立する。安全性規格「JIS8712」の認証を25年までに取得する方針。
日刊工業新聞 2022年11月08日