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車載電池メーカー2社、親会社との関係は?

トヨタ系、日産系両社長インタビュー
車載電池メーカー2社、親会社との関係は?

鈴木氏(左)と加東氏

**プライムアースEVエナジー・鈴木茂樹社長
 ―トヨタ自動車のハイブリッド車(HV)「プリウス」向けにリチウムイオン二次電池の供給を始めました。
 「リチウム電池はHV『プリウスα』にも採用されているが、量が桁違いに多い。量産に向けしっかり準備してきた。作る側からすればリチウム電池とニッケル水素電池(搭載車)がバランスよく売れてほしい」

 ―プリウスに採用された電池の特徴は。
 「リチウム電池は正極の材料変更などによりエネルギー密度を1・4倍に高めた。作り方もトヨタの生産技術を生かし効率化した」

 ―今後の増産は。
 「2015年に宮城工場(宮城県大和町)を増強し、現在ニッケル電池は年間140万台、リチウム電池は同20万台の能力がある。16年は足場固めの年。次の投資のピークは19、20年ごろだ。両電池の需要動向も見極め、立地などをトヨタと相談する」

 ―海外初となる中国工場が稼働しました。
 「15年秋に電池パックの組み立てを始めた。セルモジュールを日本から送り、現地で組み立て、トヨタのHV『レビンHV』などに供給している。16年末にはモジュール工場も稼働し、本格的な現地供給が始まる」

 ―トヨタ以外への拡販は。
 「頑張りたい。現在はニッケル水素電池をマツダなどへ供給しているが、今後はリチウムイオン電池の需要が増えると見ている」

 ―16年は創立20周年の節目を迎えます。
 「社史編さんや記念式典、福利厚生施設などを考えている。ニッケル電池とリチウム電池、外販の3本の木を育て森にしていく」

【記者の目・開発機能も求められる】
 リチウム電池は、電機メーカーも力を入れるが、同社は車載に適した開発、生産技術で一日の長がある。国内初のHV用電池製造会社として産声をあげた同社も”成人式“を迎える。技術的に成熟したニッケル電池からリチウム電池への過渡期をどう乗り切るか。電池製造だけでなく、一定の開発機能を担うことも求められる。
(聞き手=浜松・田中弥生)

オートモーティブエナジーサプライ(AESC)加東重明社長


 ―2015年の振り返りは。
 「昨年末に親会社である日産自動車が発売した電気自動車(EV)『リーフ』の航続距離が長いタイプのリチウムイオン電池を受注できたことが大きい。前から強かった品質を維持しつつ、コスト競争力を高めたことで選んでもらえた。競合他社に負けない競争力が証明されたと考えている」

 ―電池工場の稼働率の向上が課題となっていますが。
 「15年は3―4割で底だったとみている。16年は6割くらいになりそうだ。リーフは従来の電池を搭載したタイプも併売しており、新しい電池と従前の電池を並行して生産する。新しい電池のラインはフル稼働になる。リーフだけでなく車載以外の用途も稼働率向上に貢献する」

 ―リーフの電池を車載以外の用途としても販売していますが、拡販状況はいかがですか。
 「日産のグループ会社や、別の親会社NEC向けの定置型電池の販売が伸びている。15年度ではリーフ換算で5000台分になりそうだ。昨年発売したレジャー向けの持ち運べるタイプの商品は、もっと順調に滑り出したかったと言うのが正直なところ。軌道に乗せるにはもう少し時間がかかりそうだ」

 ―日産以外の自動車メーカーへの売り込みは。
 「乗用車メーカーのEVや、中国のバス、東南アジアの3輪など国内外の企業から引き合いがある。まだ収益にほとんど貢献していないが、今年から来年にかけて具体的な成果が出てくると期待している」

【記者の目・受注獲得は大きな成果】
 リーフの新しい電池の受注を巡って、韓国LGと厳しい競争を強いられた様子がうかがえる。日産はEVの基幹部品であるリチウムイオン電池をコア技術に位置づけていたが、競合電池メーカーの低コスト攻勢を受けて外部調達も辞さない方針だ。「親のすねにかじり続けてはいけない」(加東社長)情勢で受注を勝ち取ったのは大きな成果と言える。
(聞き手=池田勝敏)
日刊工業新聞2016年1月27日自動車面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
車載電池はレッドオーシャンになったと感じる。今年秋にも日産が発売するノートEVでは初めて電池を外部調達(パナソニック製)する。車載電池業界の再編も今後起こりうるだろう。

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