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勃興するデジタル医療が新たな治療手段になる日

スマートフォンやタブレット端末といったデジタル機器の普及を背景にデジタル医療(デジタルセラピューティクス、DTx)市場が成長しつつある。国内では「治療用アプリ」が厚生労働省から保険適応を認められるなど取り組みが本格化。ベンチャーやIT企業などが活発に開発を進めており、対象疾患領域の広がりから新たな治療手段として期待が高まる。(安川結野)

疾患の治療に焦点を当て、厚労省など各国の規制当局が承認したものが治療用アプリだ。特徴は臨床試験を実施し、治療効果を実証している点。欧米では精神疾患領域や糖尿病領域で実用化され、すでに数万人以上が利用するなど先行する。DTxの世界市場は今後5年で数兆円に成長するとされる。

国内のDTxをけん引するのがキュアアップ(東京都中央区)だ。キュアアップは2020年に国内初となる治療用アプリ「キュアアップ SCニコチン依存症治療アプリおよびCOチェッカー」の承認を取得し、今年9月には高血圧治療用アプリ「キュアアップHT 高血圧治療補助アプリ」を発売した。キュアアップHTは高血圧領域で保険適応となった世界初のDTxとしても注目を集めた。

高血圧症の国内の患者は4300万人ほどで、そのうち約1000万人が通院しているとされ、対象患者の多さから治療用アプリ普及の期待が高まる。富士経済(東京都中央区)によると、キュアアップ SCニコチン依存症治療アプリが発売になった翌年の21年の治療用アプリ国内市場が6500万円だったのに対し、25年には210億円にまで拡大すると予想する。

DTxを取り巻く国内の環境について、キュアアップの佐竹晃太社長は「欧米では規制当局が承認しても保険適応となるかは保険会社によって異なる。一方、日本は厚労省が承認すれば国民が使えるようになる点で、普及に有利だ」と説明する。

現在、アステラス製薬が糖尿病治療用アプリの開発を手がけるほか、サスメド(東京都中央区)が2月に不眠障害治療を目的とした治療用アプリの承認申請を実施。キュアアップも慢性心不全やアルコール依存症などを対象に開発を進める。開発競争が加速し、新たなマーケットが確立されそうだ。

日刊工業新聞 2022年11月08日

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